撮影当時、91歳だったクリント・イーストウッドが例によって監督・製作・主演の1人3役を務めたワンマン映画。
WOWOWのプログラムによると、「監督デビュー50周年にして40作目となる記念作品」だそうである。
オープニング、ウィル・バニスターの歌うカントリーソング「ファインド・ア・ニュー・ホーム」が流れる中、イーストウッドがピックアップトラックを運転して登場する場面から、もう完全に〝クリント爺さん〟の世界。
到着した牧場で牧場主に遅刻したことを叱責され、イーストウッドが悪態を出て行く短い間に、彼の演じる主人公が元ロデオのスターで、大怪我をしてから酒浸りになり、調教師として細々と暮らしていた経緯が語られる。
職を無くしたイーストウッドの前に、何かと援助を続けていた旧友(ドワイト・ヨアカム)がやってきて、メキシコで別れた妻の元にいる一人息子を連れ戻してほしい、と頼み込む。
怪しい商売をしているらしい旧友はメキシコの警察と揉めた過去があり、入国できない自分の代わりに行ってきてもらいたい、というのだ。
イーストウッドがメキシコシティーにある旧友の元妻(フェルナンダ・ウレホラ)が経営する店に行ってみると、そこは売春宿を兼ねたバーで、元妻も自分の寝室にしょっちゅう男をくわえ込んでいるらしい。
この女によれば、息子はこんな自分に愛想を尽かして出て行った、今頃は悪い仲間と闘鶏に明け暮れている、という。
旧友のグレた息子(エドゥアルド・ミネット)は案外簡単に見つかって、そのぶんアメリカへ連れ帰るまでにいろいろトラブルが起こるのかと思ったらそれほどのこともなく、意外に淡々とした展開が続く。
91歳となったイーストウッドはさすがに老け込んだ感が強く、本作の3年前に撮った『運び屋』(2018年)よりも明らかに動作も台詞回しも緩慢になった。
それでも、観終わったあと、いつものようにそこはかとない満足感が残るのが〝クリント爺さん〟の世界である。
先月、88歳で亡くなった父親とこういう映画を一緒に観たかったけど、たとえまだ生きていても、「映画を最後まで観るのは、はあしんどい」と言われたかもしれない。
ちなみに、イーストウッドは長生きの秘訣を次のように語っている。
「道路を横断するとき、左右をよく見て、バスに轢かれないようにすることだね」
(2019年に製作された49本目の監督作品『リチャード・ジュエル』のパンフレットに掲載されたインタビュー記事より)
オススメ度B。
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑