『地球の静止する日』（NHK-BSP）🤨

SF映画史上に残る古典的名作で、スピルバーグの『未知との遭遇』（1977年）以前に初めて友好的宇宙人が現れた作品とされているが、僕自身は今回のNHK〈BSプレミアムシネマ〉放送版が初見でした。
正攻法の演出で押した監督はロバート・ワイズ、荘重かつクラシカルな旋律はバーナード・ハーマンと、どちらも映画史に残る名匠。

ある日突然ワシントンに銀色の円盤が着陸し、その中から現れた宇宙人クラトゥ（マイケル・レニー）が、暴走した兵士の発砲によって負傷してしまう。
病院に担ぎ込まれたクラトゥは、対応に当たった大統領秘書官ハーレイ（フランク・コンロイ）に地球のすべての国家元首との対話を要求。

しかし、当時は米ソ冷戦時代の真っ只中とあり、両国の元首が一堂に会するのは到底不可能だ、とハーレイは返答。
するとクラトゥは病院から抜け出し、警察や軍に追われる中、盗んだ背広の持ち主カーペンターと名乗って、住宅街の一般家庭で下宿生活を始める。

僕が生まれる前の大昔には、アメリカのワシントンでもこういう間借りをしている家庭が普通にあったのかと、ちょっと驚きました。
クラトゥはこの下宿先で隣室の戦争未亡人ヘレン・ベンソン（パトリシア・ニール）とその息子ボビー（ビリー・グレイ）と親しくなり、信頼できる地球人科学者バーンハート教授（サム・ジャッフェ）に接近。

教授から世界各国の科学者たちに円盤の前に集まるよう呼びかけてもらい、ここで自分が宇宙の彼方から飛来した目的を明かすことを計画する。
ヘレンに「僕は別の惑星から来たんだ」と正体を打ち明けたクラトゥは、「30分だけ世界中のエネルギー活動を止めて見せよう」と宣言。

これがタイトルの意味で、ニューヨークをはじめモスクワやパリでも車や電車がストップし、自動車工場では操業が中断、一般家庭でもコーヒーメーカーが使えない、といった事態が頻出する。
70年前の劇場公開当時はそれなりの見せ場だったのかもしれませんが、いま観ると当時の世界各国の主要都市の街並み、欧米の工場や家庭の雰囲気がよくわかる、という資料映像的価値のほうが高い、かな。

そうした中、かねてクラトゥを疎ましく思っていたヘレンの恋人、保険会社経営のトム・スティーヴンス（ヒュー・マーロウ）がクラトゥの居場所を通報。
クラトゥはヘレンとともに軍と警察に追われる身となり、ついに銃弾を浴びて倒れてしまった。

クラトゥが地球人とまったく同じ姿形をしており、円盤で4億キロを旅して地球にやって来るほどの科学力を有していながら夜の街をタクシーで逃げ回るくだりなど、いま観ると明らかにおかしい描写が目立つ。
円盤のセットはこの時代にしてはなかなかよくできているほうだろうが、巨大ロボットのゴート（ロック・マーティン）のビジュアルはクラトゥが言う「地球を破壊することもできる」ほどの迫力は感じさせない。

それでも、「地球人は絶対に原子力を他の惑星に対して使ってはならない。もし使ったら、われわれが惑星間で結んでいる条約により、地球を攻撃するぞ」とクラトゥが人類に呼びかけるクライマックスは一見の価値がある。
いまならロシアのプーチン大統領に聴かせたいこの一節は、明らかに当時のソ連に向けたメッセージのメタファーであり、クラトゥの言う「惑星間条約」も現実世界のNATOに重なる。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A＝ぜひ！🤗　B＝よかったら😉　C＝気になったら🤨　 D＝ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

60『ウエストワールド』（1973年 ／米）B
59『スーパーマン&ロイス』シーズン1(12)「たとえ死の谷を歩むとも」（2021年／米）B
58『スーパーマン&ロイス』シーズン1(11)「つかの間の追憶」（2021年／米）A
57『天使と悪魔』（2009年／米）A
56『キングコングの逆襲』（1967年／東宝）B
55『キング・コング』（1933年 ／米）A
54『スーパーマン&ロイス』シーズン1(10)「母との再会」（2021年／米）A
53『スーパーマン&ロイス』シーズン1(9)「忠実なサブジェクト」（2021年／米）A
52『TOKYO VICE』#8剣ヶ峰（2022年／WOWOW、HBO Max）C
51『TOKYO VICE』#7不義不徳（2022年／WOWOW、HBO Max）B
50『ライトハウス』（2019年／米）C
49『TOKYO VICE』#6虚々実々（2022年／WOWOW、HBO Max）B
48『TOKYO VICE』#5因果応報（2022年／WOWOW、HBO Max）B
47『スーパーマン&ロイス』シーズン1(8)「無力な自分」（2021年／米）B
46『スーパーマン&ロイス』シーズン1(7)「鋼鉄の男」（2021年／米）B
45『プロミシング・ヤング・ウーマン』（2020年／米）A
44『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』（2018年／米）B
43『クワイエット・プレイス』（2018年／米）A
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41『TOKYO VICE』#3精神一到（2022年／WOWOW、HBO Max）C
40『ドニー・ダーコ』（2001年／米）B
39『スーパーマン&ロイス』シーズン1(6)「パワーの代償」（2021年／米）B
38『スーパーマン&ロイス』シーズン1(5)「スモールビルの良心」（2021年／米）B
37『TOKYO VICE』#2起死回生（2022年／WOWOW、HBO Max）B
36『TOKYO VICE』#1新聞記者（2022年／WOWOW、HBO Max）B
35『ふたりのウルトラマン』（2022年／NHK）A
34『スーパーマン&ロイス』シーズン1(4)「波乱の幕開け」（2021年／米）B
33『スーパーマン&ロイス』シーズン1(3)「人気者であることの特権」（2021年／米）B
32『カムバック・トゥ・ハリウッド‼︎』（2020年／米）B
31『すばらしき世界』（2021年／ワーナー・ブラザース）A
30『私は確信する』（2018年／仏、白）C
29『透明人間』（2020年／米）A
28『アナザーラウンド』（2020年／丁、蘭、瑞）A
27『スーパーマン&ロイス』シーズン1(2)「引き継いだもの」（2021年／米）A
26『スーパーマン&ロイス』シーズン1(1)「パワーの目覚め」（2021年／米）A
25『日本女侠伝　侠客芸者』（1969年／東映）A
24『昭和残俠伝　血染の唐獅子』（1967年／東映）B
23『大コメ騒動』（2021年／ラビットハウス）C
22『王の願い　ハングルの始まり』（2019年／韓）A
21『フラッシュ・ゴードン』（1980年／米）B
20『タイムマシン』（2002年／米）C
19『アンダーウォーター』（2020年／米）C
18『グリーンランド−地球最後の2日間−』（2020年／米）B
17『潔白』（2020年／韓）B
16『ズーム／見えない参加者』（2020年／英）C
15『アオラレ』（2020年／米）B
14『21ブリッジ』（2019年／米）B
13『ムニュランガボ』（2007年／盧、米）C
12『ミナリ』（2020年／米）A
11『バイプレイヤーズ　もしも100人の名脇役が映画を作ったら』（2021年／東宝映像事業部）C
10『死霊の罠』（1988年／ジョイパックフィルム）C
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7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』（2014年／以）B
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2『食われる家族』（2020年／韓）C
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