『私は確信する』(WOWOW)🤨

Une Intime Conviction
110分 2018年 フランス、ベルギー
日本公開:2021年 配給:セテラ・インターナショナル

フランスで実際に起こった女性の失踪事件、彼女の夫の冤罪裁判の実話ダネで、事件発生当時はマスコミにセンセーショナルに報じられたことから、この映画化作品も仏本国では結構ヒットしたという。
ただし、題材となった〝ヴィギエ事件〟そのものが日本ではまったくと言っていいほど知られていないため、映画が始まる前に配給会社による説明文がつけられている。

2000年2月27日、フランス南西部トゥールーズ地方で大学教授ジャック・ヴィギエ(ローラン・リュカ)の妻でダンス教師のスザンヌが失踪した。
スザンヌには再婚を考えている愛人オリヴィエ・デュランデ(フィリップ・ウシャン)がいて、夫ジャックも妻の不倫に気づいていたらしいこと、スザンヌ失踪前後の行動に不審な点があることなどから、警察はジャックをスザンヌの殺害容疑で逮捕。

その後、スザンヌの遺体が見つからないため、ジャックは証拠不十分で釈放されたが、7年後の2007年になってふたたび妻殺害の容疑をかけられてしまう。
さらに2年後の2009年に重罪院が始まり、いったんは無罪となったものの、検察側が控訴して二審が開始される、というところからこの映画は始まる。

フランスのメディアが騒ぎ立てたのは、ヴィギエの大学での専門が映画で、ヒッチコックの大ファンだったことから、「ヒッチコック張りの完全犯罪を目指したのでは」という憶測が広がったためらしい。
この事件に興味を抱くシングルマザーの料理人ノラ(マリーナ・フォイス)はジャックの無実を信じ、二審の前に事件の資料を作成して、辣腕弁護士エリック・デュポン=モレッティ(オリヴィエ・グルメ)の元に持ち込む。

デュポンは当初、二審が行われる裁判所判事との間に過去の確執があったため、ノラの弁護依頼を頑なに拒否。
しかし、すぐに態度を一変させ、自らノラに電話をかけ、判事と和解したから弁護を引き受けることにした、と告げる。

デュポンはさらに、愛人デュランをはじめとした証人たちの通話250時間分を録音したCDをノラに渡し、重要と思われる部分を文字起こしするように要請。
こうしてノラとデュポンの再調査が始まるのだが、ヴィギエ夫妻とは赤の他人のノラがどうしてここまでこの事件にのめり込むのか、その動機が納得できるように描かれていないので、なかなかストーリーの流れに乗っていけない。

監督・脚本・原案を手がけたアントワーヌ・ランボーは本作が長編デビュー作。
実在のデュポン弁護士を主役に据えた短編で評価されていたことから、本作もデュポン弁護士からアイデアを得ているらしい。

ただし、事件の当事者ではないノラを主人公に据えた筋立ては成功しているとは言い難い。
また、すべてを事実に即して描くことには差し障りがあったためか、随所にフィクションが織り交ぜられているそうで、そうしたくだりが肝心の事件の真相とうまく融合していないように感じられました。

オススメ度C。

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A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

29『透明人間』(2020年/米)A
28『アナザーラウンド』(2020年/丁、蘭、瑞)A
27『スーパーマン&ロイス』シーズン1(2)「引き継いだもの」(2021年/米)A
26『スーパーマン&ロイス』シーズン1(1)「パワーの目覚め」(2021年/米)A
25『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
24『昭和残俠伝 血染の唐獅子』(1967年/東映)B
23『大コメ騒動』(2021年/ラビットハウス)C
22『王の願い ハングルの始まり』(2019年/韓)A
21『フラッシュ・ゴードン』(1980年/米)B
20『タイムマシン』(2002年/米)C
19『アンダーウォーター』(2020年/米)C
18『グリーンランド−地球最後の2日間−』(2020年/米)B
17『潔白』(2020年/韓)B
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15『アオラレ』(2020年/米)B
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12『ミナリ』(2020年/米)A
11『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021年/東宝映像事業部)C
10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
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3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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