これは面白かった!
SFとサイコ・サスペンスを掛け合わせたエンターテインメントは数多あるが、本作は最高傑作と言ってもいい出来栄えである。
オープニング、海岸に立つ瀟洒な豪邸の寝室から、深夜に妻と思しき女性セシリア・カシュ(エリザベス・モス)が逃げ出す。
彼女を迎えにきた妹シドニー(ストーム・リード)の運転する車に乗り込んだ次の瞬間、追いかけてきた夫エイドリアン・グリフィン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)が運転席のウインドウを破壊。
その2週間後、警官ジェームズ・レイニア(オルディス・ホッジ)の家に下宿しているセシリアの元にシドニーがやってきて、エイドリアンが自殺したことを告げる。
という経緯から、エイドリアンが天才的な光化学の学者だったが、ひどい強迫神経症で、同居していたセシリアを虐待し、それに耐えかねた彼女が逃亡を図ったのだ、ということがわかってくる。
こうしてセシリアは完全にエイドリアンの束縛から自由になったはずが、その夜から彼女の周囲で奇妙な出来事が続出し、彼女はエイドリアンが死んだと見せかけて生きており、自分を監視しているのではないかという疑惑を抱く。
開巻から30分近く、エイドリアンは顔や死体となった写真がチラリと映るだけでほとんど姿を見せず、セシリアが脅えているのも彼女自身の単なる思い込みとしか、ジェームズやシドニーには思えない。
正直、観ている間はいささかじれったく感じられたものの、この神経症的な描写の積み重ねが後になって効いてくる。
また、こういうジリジリしたサスペンスの盛り上げ方がうまくいっている場合、ネタとなる透明人間が現れた途端、緊張感が吹き飛んでダラダラした展開になるのではないか、と予想していたら、この映画は次から次にこちらの意表を突き、最後までグイグイ引っ張っていく。
監督・脚本を手がけたリー・ワネルのアイデアは非常に秀逸で、まったくダレることのない演出も切れ味抜群。
透明人間に対する恐怖を一人芝居で巧みに表現し、映画の最初と最後で別人のようになるエリザベス・モスの演技もアカデミー賞級の素晴らしさでした。
オススメ度A。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨 D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録
28『アナザーラウンド』(2020年/丁、蘭、瑞)A
27『スーパーマン&ロイス』シーズン1(2)「引き継いだもの」(2021年/米)A
26『スーパーマン&ロイス』シーズン1(1)「パワーの目覚め」(2021年/米)A
25『日本女侠伝 侠客芸者』(1969年/東映)A
24『昭和残俠伝 血染の唐獅子』(1967年/東映)B
23『大コメ騒動』(2021年/ラビットハウス)C
22『王の願い ハングルの始まり』(2019年/韓)A
21『フラッシュ・ゴードン』(1980年/米)B
20『タイムマシン』(2002年/米)C
19『アンダーウォーター』(2020年/米)C
18『グリーンランド−地球最後の2日間−』(2020年/米)B
17『潔白』(2020年/韓)B
16『ズーム/見えない参加者』(2020年/英)C
15『アオラレ』(2020年/米)B
14『21ブリッジ』(2019年/米)B
13『ムニュランガボ』(2007年/盧、米)C
12『ミナリ』(2020年/米)A
11『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021年/東宝映像事業部)C
10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B