バットマンの実写映画化作品はティム・バートン監督、マイケル・キートン主演版(1989年)以降、クリストファー・ノーラン監督、クリスチャン・ベール主演のダークナイト・トリロジー3作(2005、08、12年)、ザック・スナイダー監督、ベン・アフレック主演のDCエクステンデッドユニバース(DCEU)シリーズ版(16年)まで、主要作品はほとんどオンタイムで観ている。
それぞれに見応えがあった諸作品の中で、最も衝撃的で曰く言い難い印象を残したのは、バットマンが登場せず、ホアキン・フェニックスが宿敵ジョーカーの半生を演じた『ジョーカー』(19年)だろう。
本作のポスター(画像)のコピーにはその「『ジョーカー』の衝撃を超える」と謳われているが、本作はああいう哲学的な側面のある映画とは違い、新たなDCEUシリーズの一本であり、あくまでもヒーロー映画として作られている。
ベイル、アフレックより一回り以上若返った35歳のロバート・パティンソン演じるブルース・ウェインは、まだバットマンとして活躍するようになって2年目で、幼少期に両親を失った悲しみとトラウマを引きずっている、という設定。
言わばいささか青臭いバットマンがオープニングからゴッサムシティのチーマーみたいな連中と繰り広げる乱闘は、ベールやアフレックと違って少々モタモタしている感が強い。
大して強くないチンピラに結構簡単に殴り返されてしまうあたり、カッコよくはないけれど、生身のヒーローというリアリティを感じさせる。
そんなバットマンに挑戦状を突きつけるのが、正体不明の連続殺人犯リドラー=エドワード・ナッシュトン(ポール・ダノ)。
ゴッサムシティの市長選たけなわの最中、ハロウィーンの夜に現職の市長ドン・ミッチェル・ジュニア(ルパート・ペンリー=ジョーンズ)を撲殺し、顔をグルグル巻きにしたビニールテープに「もうウソはたくさんだ」と書きつけ、バットマンに不敵なメッセージを残す。
続いて、ミッチェル市長と親交の深かったピート・サベージ市警本部長(アレックス・ファーンズ)も、死に際の表情をSNSにアップされた上、ネズミに顔を齧らせるという残忍な手口で殺害された。
一方、リドラーの残したメッセージを分析していたブルースは、かつて麻薬犯罪組織のボスを逮捕させたミッチェル市長が、実は陰で暗黒街の顔役カーマイン・ファルコーネ(ジョン・タトゥーロ)と結託していたことを知る。
さらに殺人を重ねるリドラーとブルースが知恵比べと神経戦を繰り広げている中、かつて殺されたブルースの父トーマス(ルーク・ロバーツ)に〝裏の顔〟があったという疑惑が浮上。
ここからブルースの内面を深掘りしてゆくくだりが、これまでのバットマン像とは一線を画した見どころの一つとなっている。
当然のことながら、パティンソンは同じDCEUシリーズでアフレックが演じた〝大人のブルース〟とはかなり異なった役作りをしており、本作のキャラクターはベールがダークナイト・シリーズで演じたブルースに近い。
とくにバットマンに変身している間、終始鋭い目つきでドスを効かせたしゃべり方をしているところなど、ベール版にあまりにも似過ぎているのは、ダークナイトのファンを意識したからだろうか。
ビジュアル的な最大の見せ場は、予告編でも一部が使われていたバットモービルが登場するシーン。
これはバットマンの実写映画化版史上随一、バットモービルを描いた場面の中では間違いなくベストと言っていいほどのド迫力なので、これから観る方にはぜひ、エキゾーストノートで座席が振動するほどのIMAXでこのエキサイティングなシーンを堪能していただきたい。
監督はリブート版『猿の惑星』シリーズ、『新世紀』(14年)、『聖戦記』(17年)のマット・リーヴスで、今回もファンを熱狂させた力感たっぷりの演出が光る。
というわけで、見応えは十二分ながら、謎解きの興味を基調としたこのストーリーで3時間弱はやはり長過ぎたんじゃないかな、という気がしないでもない。
念のために付け加えておくと、暗闇で火花が明滅する場面、ゴッサムシティが洪水に襲われる場面などもあるから、そうした画面に敏感に反応する方、ストレスを感じる方はご注意ください。
なお、今後は当然シリーズ化され、すでに3作の続編製作が決まっているそうです。
採点は80点です。
2022劇場公開映画鑑賞リスト
※50点=落胆😞 60点=退屈🥱 70点=納得☺️ 80点=満足😊 90点=興奮🤩(お勧めポイント+5点)
2『ドライブ・マイ・カー』(2021年/ビターズ・エンド)90点
1『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年/米)90点