『ムニュランガボ』(WOWOW)🤨

Munyurangabo
98分 2007年 ルワンダ、アメリカ
日本劇場未公開 WOWOW初放送:2022年1月23日23時25分

前項の最新作『ミナリ』で世界的に高く評価されたリー・アイザック・チョンの長編監督デビュー作にして、ルワンダ史上初めて全編同国で撮影されたという長編劇映画。
俳優もすべてルワンダ人で、チョンは『ミナリ』と同様に製作と監督に加え、撮影と編集も自ら行なっている。

親に行き先も告げずに実家を出てから3年、キガリという町に移り住んでいたサンワ(ンドランクンディイェ・エリック)は、一緒に暮らしていたンガボ(ルタゲングワ・ジョセフ〝ジェフ〟)とともに旅に出る。
サンワがバス代にするはずだった旅費を使い込んだため、ピックアップトラックでのヒッチハイクとなった。

やがてサンワの生まれ故郷の村が近づいてくると、サンワは汚れたシャツを買ったばかりの真っ白なシャツに着替えた。
旅の目的は別にあったが、サンワは最初から実家に帰りたくて、実家の親に羽振りのいいところを見せようと、旅費の一部で新しいシャツを買っていたのだ。

母親(ンイィラブシェイェ・ナルシシア)はサンワを温かく迎えてくれたが、父親(ンクリキイィンカ・ジャン・マリー・ヴィアネイ)には差し向かいで厳しい説教を受ける。
3年間も家を出たまま、連絡ひとつ寄越さず、幼いきょうだいの面倒も見ないで何をやっていたのか、そんなことで一人前の男になれると思っているのか、と。

サンワはンガボとともにしばらくこの実家に寝泊まりすることになり、ふたりが畑仕事を手伝ったり、家の壁を修繕したりしているうちに父親の態度も軟化。
実家にいるうちにすっかり腰が重くなってしまったサンワに、「俺の親父を殺したやつに復讐する目的を忘れたのか」とンガボは詰め寄る。

一方、サンワの父親は、ンガボはツチ族だ、俺たちフツ族の敵だ、仲良くしてはいけない、とサンワに告げる。
ツチ族であることを知られたンガボは、ツチ族はフツ族に虐殺された、おまえの親父も虐殺したんだとサンワに食ってかかり、殴り合いの大喧嘩になる。

やがてンガボの飲み友達になっていたグウィザ(ハレリマナ・ジャン・ピエール〝ムロンダ〟)が病に倒れると、サンワの父親が激高。
サンワとンガボを「おまえたちが来てからろくなことがない、ウチから出て行け!」と怒鳴りつけ、サンワを激しく打ち据えて本当に追い出してしまう。

サンワと喧嘩別れしたンガボは、ひとりで辿り着いた村で詩人と名乗る人物(ウワヨ・B・エドゥアルド)に会い、その日の祭で披露する予定だという詩を聞かされる。
このクライマックスで初めて、ルワンダにおけるフツ族とツチ族の内戦と、1994年に1カ月で100万人のツチ族と一部フツ族が虐殺された事件が詳しく語られる。

チョンの画作りはワンシーンワンカットの長回しが多く、デビュー作も演出も生硬に感じられるが、確実にルワンダの空気感を伝えており、独特の詩情と力強さを感じさせる。
ただし、ルワンダ虐殺に関する知識がないと、十分に内容を理解するのは難しいだろう。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

12『ミナリ』(2020年/米)A
11『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(2021年/東宝映像事業部)C
10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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