『バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら』(WOWOW)🤨

100分 2021年 東宝映像事業部

テレビ東京の人気ドラマ『バイプレイヤーズ』の第3シーズン『名脇役の森の100日間』(2021年)の映画版だが、僕は下敷きとなったドラマのほうは観ていない。
主役の田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一、濱田岳をはじめ、約100人俳優のほとんどが本人役で登場している、という大がかりなアイデアが出色。

舞台は様々な映画、テレビドラマ、ネット配信ドラマが制作されている富士山麓の撮影所「バイプレウッド」。
最近、極めて厳しい経営状態に追い込まれ、外資の大手ネット配信会社に売却しようとしている、という話が持ち上がり、この撮影所に愛着を抱く天海祐希が外資の買収を阻止しよう、と呼びかける。

折しも、濱田が現在、かつて撮影所の所長(大杉漣)が脚本を書いた『月のない夜の銀河鉄道』という自主制作映画を役所広司主演で撮影中。
この映画のラストシーンは100人の役者を載せた蒸気機関車が月に向かって飛んでいくというもので、これを実現して大ヒットさせれば、撮影所も売却を考え直すはずだ、と天海は考えた。

しかし、ほとんどの役者は、オファーをして回る濱田、制作スタッフの菜々緒に対して、スケジュールが立て込んでいることを理由に出演依頼を拒否。
このくだりで笑えるのは、架空の朝ドラ『ちゃきちゃき家族』を撮影中の木村多江が、ネット配信会社と契約を結んだばかりだからと、菜々緒に慇懃に断りを入れる場面。

その木村の隣で、木村の娘役・岸井ゆきのが、「そのギャラがすごくて、多江さんチョー機嫌よくて、家も新築するらしいし」とあっけらかんとした口調で暴露。
ここで木村が不気味な作り笑いを浮かべ、「ゆきの、表に出ようか」と岸井を脅し、首を絞めるところが最高におかしい。

そうした最中、撮影所のアイドル的存在で、『銀河鉄道の夜』の主役でもある老犬・風(ふう)が行方不明になってしまう。
果たして風は見つかるのか、濱田や天海、彼らに協力する田口、松重、光石、遠藤らバイプレーヤーたちは『銀河鉄道の夜』を完成させ、バイプレウッドの売却を阻止することができるのか。

というお話を、テレビドラマ版も演出している松居大悟監督がホノボノとしたタッチで描き、最後までそれなりには楽しませてくれる。
しかし、原典のドラマ版を観ていないと、主役のキャラクターや関係性がいまひとつわかりにくいのも確か。

とくに、撮影所長の大杉漣、クライマックスでフィリピンから撮影所に駆けつける遠藤憲一など、ドラマ版を観ているファンにはグッとくるのだろうが、僕のような初見の観客にはピンとこず、むしろもどかしさが募った。
というわけで、ドラマ版を観ている人と観ていない人とでは、受け止め方に温度差があるのではないかと感じました。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2022リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

10『死霊の罠』(1988年/ジョイパックフィルム)C
9『劇場版 奥様は、取扱注意』(2021年/東宝)C
8『VHSテープを巻き戻せ!』(2013年/米)A
7『キャノンフィルムズ爆走風雲録』(2014年/以)B
6『ある人質 生還までの398日』(2019年/丁、瑞、諾)A
5『1917 命をかけた伝令』(2020年/英、米)A
4『最後の決闘裁判』(2021年/英、米)B
3『そして誰もいなくなった』(2015年/英)A
2『食われる家族』(2020年/韓)C
1『藁にもすがる獣たち』(2020年/韓)B

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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