少年マガジンの連載とテレビアニメから半世紀、『あしたのジョー』論はもはや語り尽くされたと思ってはいても、やはりこういうドキュメンタリー番組は後を絶たない。
こちらもどうせまた、全共闘世代の思い入れたっぷりの〝ジョー&力石讃歌〟を聞かされるだけだろうと察しながら、つい録画して観てしまうのだから、やっぱり好きなんですよね、ジョーが。
今回は力石徹のモデルだったという元キックボクサー、空手家・山崎照朝が初めて『ジョー』や原作者・高森朝雄(梶原一騎)との関わりについて証言。
今年74歳の山崎も学生時代に日大闘争を経験しており、勉強をしたくて大学に入ったのに、その機会を奪った全共闘の学生たちに腹を立て、闘争を阻止する側として立ち向かった、というくだりが興味深い。
元マラソンランナー、オリンピック2大会連続メダリストの有森裕子が熱烈なジョーのファンだったことは初めて知った。
1992年バルセロナ大会で銀メダルを獲りながら、当時の陸連や周辺関係者には祝福されず、96年アトランタ大会ではジョーのように真っ白な灰となって燃え尽きるまで走り抜こうと決心した、という。
そういう証言を聞いてから、あの有森が「初めて自分で自分を褒めたい」と語ったインタビュー映像を再見すると、改めて万感の思いが篭った言葉だったのだな、と感じる。
ちなみに、有森は『ジョー』のラストシーンについて、「私の中では死んだと解釈している」そうである。
オススメ度B。