今日22日、明日23日の2日間、北の丸公園の科学技術館催物場で開催されているハンドメイドバイシクル展(HANDMADE BYCYCLE 2022)に行ってきました。
一般的にはあまり知られていませんが、自転車のオリジナルフレームを製作しているビルダー、その自転車にパーツを提供しているメーカー41社が一堂に会して最新作を展示するイベントです。
主催は一般財団法人・自転車普及協会、自転車文化センターで、後援は自転車活用議員連盟・自転車活用推進本部(会長・二階俊博、副会長・橋本聖子)。
オンライン開催となった前回も含めると、今年で35回目を数え、僕が足を運んだのは「第20回記念フェスティバル」と銘打たれた15年前の2007年以来だった。
今回、久しぶりにこのイベントを訪ねたのは、何度もマウンテンバイクのツアーでお世話になり、このブログにもたびたび登場しているチャリ友・タムニィから自作の自転車を出展するというお知らせがあったから。
そのタムニィは、BYOB Factory Tokyoのブースで、これが3作目という自信作、オリジナルのディスクブレーキ・ランドナーを披露していました。
チューブはタンゲ・プレステージで、フレーム内部にクイックレバーを収納できたり、ペットボトルを9本運べるようになっていたり、ランドナーのロングライドにうってつけの性能を備えている。
そして、最大の売り物は何と言っても、画像の貼り紙にもあるように、輪行のための分解、組み立てが、実にスピーディーかつ簡単にできること。
このタムニィ・ランドナーがいかに便利にできているか、よかったらInstagramにアップした本人による実演動画(約3分)をご覧ください。
「いやあ、速いなあ、あっという間だなあ」と僕が感心していたら、「そりゃ朝から10数回もずーっとこれやってるんだもん、速くなるよ」とタムニィは苦笑い。
さて、今回の目的はもうひとつ、もしサイクルストアーヒロセがいまも出品しているのであれば、フレームビルダーのレジェンド・廣瀬秀敬さんに久しぶりにお会いすることだった。
しかし、あらかじめHANDMADE BYCYCLE 2022のホームページをチェックすると、出展社一覧にヒロセさんの名前がないので、さすがにもう引退されたのかと思ったら、一昨年の夏に78歳で亡くなったと、きょうタムニィに聞いて初めて知りました。
今回は廣瀬さんの後を継がれた岡田勝洋さんが、ショップの名前をサイクルストアーオカダと改めて出展。
かつて廣瀬さんの工房に飾られていた塗装前のフレーム、廣瀬さんが残したフレームを組み上げたランドナーを見ながら、最後の愛弟子でもあった岡田さんに、廣瀬さんの晩年、代替わりした現在の工房の様子などを伺いました。
僕が廣瀬さんのショップに足繁く通っていたのは、フリーになる直前の20年近く前のこと。
職人と言われるビルダーは数多いけれど、「作れる物は何でも作る」を信条としていた廣瀬さんは、フレームだけでなく、チェーンリング、ハブ、ボトルケージ、泥除けまで、本当に全部自分で作っていました。
驚いたのは、パーツを固定するネジまで1個1個作っていたこと。
「普通に売っているネジじゃダメなんですか?」と質問したら、「その自転車に最適のサイズのネジがないから自分でちょうどいい大きさのネジを作るんだよ」と言われたものです。
そういう廣瀬さんにロードバイクを作ってくださいとオーダーすると、当時僕が乗っていたシファックのフレームを細かくチェックされ、ふだんどこをどれほど走っているのか、こちらの〝自転車履歴〟を根掘り葉掘り聞いてくる。
その合間に廣瀬さんならではの蘊蓄も披露されて、最初のオーダーを通すのにかかった時間が確か2時間半以上。
こうしてできたロードにしばらく乗って、廣瀬さんの作る自転車なら間違いないと確信。
今度はランドナーを注文しようと思い、どれぐらいかかりますかと聞いたら、廣瀬さんは「時間なら1年以上」と答え、代金については何も言わずに人差し指を立てました。
そのランドナーは廣瀬さんにとって大変な自信作だったらしく、20回目のハンドメイドバイシクル展が同じ科学技術館で開催される直前、「赤坂さんの自転車を展示したいから貸してくれる?」と電話がかかってきたのです。
それがちょうど15年前の2007年のことで、興味津々で見に来てくれたタムニィが、いまや新進気鋭のフレームビルダーという現実に時の流れを感じる。
廣瀬さんがこのランドナーを製作した当時、サイクルストアーヒロセは創業35周年を迎えており、メーンチューブにはそれを記念する「35」というステッカーが貼られています。
このランドナーはその後、専門誌や一般の雑誌にも取り上げられ、だんだん乗り回していてフレームに傷でもつけたら大変だと思うようになり、いまではすっかりリビングのインテリアと化してしまいました。
でも、自転車はやはり、乗ってあげなければ存在している意味がない。
暖かくなったらまた、これに乗って荒川河川敷でも流そうかな。