『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(IMAX with laser GT 2D)🤩

Spider-Man: No Way Home
149分 2021年 アメリカ=コロンビア・ピクチャーズ・リリーシング 
日本公開:2022年 配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント 
@グランドシネマサンシャイン池袋 シアター12 14:10〜16:30

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)内のこのシリーズは昨年、WOWOWで『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)と前2作を立て続けに観て以来、続編が公開されるのを心待ちにしていた。
なにしろ、前作のエンディングではスパイダーマン(トム・ホランド)がミステリオ(ジェイク・ギレンホール)一味に濡れ衣を着せられた上、ピーター・パーカーという正体をネット上で暴かれてしまい、ピーターがどうすればいいんだと途方に暮れるところで終わっているのだから。

本作はその前作の場面から幕を開け、街中で通行人やマスコミに囲まれた恋人MJ(ゼンデイヤ)をピーターが救い出し、彼女を抱いたまま、ウェブ・シューターを駆使して大都会のビル群の中を飛び回る、という出だしのツカミからたちまち引き込まれてしまう。
スパイダーマンの〝中の人〟兼凶悪犯として世界的有名人になり、MIT(マサチューセッツ工科大学)に入学を拒否されたピーターは、アベンジャーズの先輩ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に、タイムストーンで自分がミステリオをやっつけた過去をなかったことにできないか、と相談。

しかし、時間を操れるタイムストーンは『アベンジャーズ エンドゲーム』(2019年)で破壊されたため、代わりに世界中の人間からピーターがスパイダーマンだという記憶を消し去る魔術ならできる、とストレンジは回答。
ピーターはこの提案に飛びつくが、ストレンジが呪文を唱え始めた途端、「MJは除いて」「あっ、ネッド(ジェイコブ・バタロン)も」「それからメイ叔母さん(マリサ・トメイ)も」などと再三ストレンジの作業を中断させたため、魔術の結界に隙間が生じ、マルチバース(多元宇宙の別世界、別次元)から過去に倒したヴィランが入り込んでくる。

ここから、トビー・マグワイア主演、サム・ライミ監督版の旧シリーズ『スパイダーマン』(2002年)のグリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)、『スパイダーマン2』(2004年)のドクター・オクトパス(アルフレッド・モリーナ)など懐かしのヴィランが続々と登場。
こりゃ一体どういうことだと思ったら、というこの先は、そろそろネット上にネタバレ情報が拡散しているけれども、僕としては書かずにおきます。

僕のシネ友には熱狂的なマーベルファンがいて、新作が公開されるたびに深夜の先行最速上映にまで足を運び、何度もリピートしてはディテールを味わい直したり、感動を新たにしたりしている。
僕はそこまでハマっていなくて、本作が27作目となったMCUシリーズ作品もすべて観てはいるけど、ほとんどは劇場ではなくWOWOWだった。

要するに、それだけ、映画館へ足を運ぶほどの魅力を感じられなかったのだ。
が、本作の世界観とシナリオは20年前に製作されたマーベル以前の旧シリーズまで遡り、その作品群をオンタイムで観た僕のようなオールドファンのハートを鷲掴みにして、激しく揺さぶってきた。

本シリーズ3連投のジョン・ワッツ監督の演出も、ここまできたら巨匠とも言うべき円熟の域。
最初はコメディータッチでこちらを引き込み、目眩くVFXとワイヤーアクションで目を奪うと、ピーターをはじめ主要キャラクターの人物像もきちんと描き込んで、泣かせるところではシミジミと泣かせてくれる。

本作の序盤ではまだアベンジャーズの落ちこぼれだったピーターも、後半では大人としての自覚を持った逞しい大人に成長しており、観終わったら壮大なビルドゥングスロマン(教養・成長・人間形成小説)のような印象すら残る。
MCUシリーズ全27作中、文句なしに一番好きで、一番感動して、一番面白い映画でした(旧シリーズを観ていない若いファンが僕と同じように感じるかどうかはわかりませんが)。

採点は90点。

2022劇場公開映画鑑賞リスト
※50点=落胆😞 60点=退屈🥱 70点=納得☺️ 80点=満足😊 90点=興奮🤩(お勧めポイント+5点)

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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