初めて知った実家の裏面史、味噌と酒の秘密😳

玄関先で逆様に伏せられている甕

2年ぶりに実家に帰ってくると、いままで気にもかけていなかったものがふと目に止まり、はて、これはいったい何だろう? と首を捻った。
それが、玄関の右脇に伏せられている大きな甕である。

で、勝手口で親父の片付け物を手伝っている最中、「あの甕、傘立ての代わりか何か?」と聞いたら、「傘立てなら玄関の中にあるじゃろうが」という返事。
では何かと質問を重ねると、「昔はお母さんところのお祖母さんが味噌を作っとってのう、それを持ってきてくれちゃあ、あの中に保存しとったんじゃ」。

今でこそ、おふくろもスーパーで買った既製品の味噌を使っていて、ふだんはインスタント味噌汁で済ませることも珍しくなくなっている(高齢化でしんどくなっているという事情もあります)。
でも、昔は自分の母親が持ってきた自家製味噌で様々な料理を僕に食べさせてくれていたのです。

そんなこと、もうすぐ59歳になる今になって初めて知った。
何だかもう、改めてうれしくなるやら、逆に情けなくなるやら。 

菩提寺・照蓮寺の正門
照蓮寺本殿

お墓参りは帰省した翌日の12月28日に行きました。
菩提寺の照蓮寺は観光コース〈たけはら町並み保存地区〉の一部にあり、このお寺自体も観光名所のひとつ。

コロナ前は定期的にイベントが行われ、境内に地元の名店が出店を並べていたけれど、ご存知のような感染状況で再開のメドは立っていません。
本殿の廊下は鶯張りになっていて、歩くと足元から囀りが聞こえるので、お立ち寄りの際は話のネタに上がってみてください。

町並み保存地区も年末年始は閑散
たばこの自販機も時代を感じさせる

すでに亡くなった祖父母の家も、この町並み保存地区のすぐ近くにありました。
近所には地酒の〈龍勢〉や〈宝寿〉で有名な藤井酒造があって、祖父は辛口の宝寿を好み、毎晩のように飲んでいたそうです。

僕も里帰りした際には必ず宝寿を買って親父と飲んでいましたが、今年は品薄で竹原市内のスーパーではほとんど見かけない。
仕方なく、値段だけは宝寿より高い龍勢の純米吟醸五合瓶を買って親父と飲んでいたら、元日に早々と空になってしまった。

ちなみに、親父はここ数年、体調を気遣って酒を控えていたけれど、2年ぶりに息子と会って解禁することにしたらしい。
ところが、2日に同じ龍勢・純米吟醸を買おうとしたら、これまた品切れになっていて、泣く泣くもっと高い龍勢・純米大吟醸を買う羽目になっちゃった。

で、ゆうべ、僕がお猪口に注ぎ、一口飲んだ親父が一言。
「…こりゃあ、甘口じゃの」

それをそばで聞いていたおふくろ曰く、「あれだけ飲んどらんかったのに、そういうことはすぐわかるんじゃねえ」。
血筋は争えませんね。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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