1988年、昭和(最後の)63年は僕が日刊現代に入社して3年目、運動部に異動となり、今年で33年目に達したプロ野球取材をスタートさせた年である。
まだ25歳だった当時、現場を駆けずり回っている一記者として、この本に描かれた南海からダイエー、阪急からオリックスへの身売りについての関連取材を行い、伝説の「10.19」の夜は西武球場にいた。
ダイエーが南海の買収に乗り出す前、実はロッテと交渉を重ねていたことは、本書を読んで初めて知った。
その背景には、ライオンズが西鉄から西武に身売りし、福岡から埼玉へ去った1978年から10年、ふたたび博多にプロ野球球団を誘致しようという福岡JC(青年会議所)の地道で粘り強い活動があった。
一方、阪急がオリックスへ球団譲渡することになったきっかけは、宮古島のリゾート開発、ゴルフ場造設のために阪急、オリックス、三和銀行の関係者が当地で持った会合の席でのやり取りだった。
「身売り」という言葉が衝撃的でネガティヴな響きを持って受け止められていた時代、阪急ファンからの猛反発を恐れたオリックスは、水面下でダイエーの南海買収の動きを睨みながら、2番手として目立たぬように阪急との交渉を進めていたという。
そうした数々の新事実が綴られたのち、あの年の川崎球場で繰り広げられたロッテ−近鉄のダブルヘッダー「10.19」のクライマックスに突入。
この試合については僕もSports Graphic Number 790(2011年11月10日号)に『10.19 仰木彬が名将となった日』という小文にまとめている。
しかし、本書ではこれまで近鉄側から語られることの多かったこの試合を、長らく悪役とされてきたロッテ側の有藤監督の言い分を中心に描いており、仰木監督のわがままな振る舞いが優勝を逃す遠因になったようにも感じられる。
という具合に、この時代のプロ野球取材に携わった人間にとっては、それなりに読みどころの多い一冊。
ただし、著者が元社会部記者のせいか、全体的構成は物語としての膨らみに乏しく、ノンフィクションというより随分長い新聞記事のような印象が強い。
また、僕は巨人球団代表だった頃の著者に何度か取材で接したことがあるのだが、当時の球団トップとしての対応ぶりに比べると、「激震」とか「ヒール」とか、いかにもスポーツ紙・夕刊紙的な表現を多用していることも意外だった。
😁🤔🤓
2021読書目録
面白かった😁 感動した😭 泣けた😢 笑った🤣 驚いた😳 癒された😌 怖かった😱 考えさせられた🤔 腹が立った😠 ほっこりした☺️ しんどかった😖 勉強になった🤓 ガッカリした😞
23『伝説の史上最速投手 サチェル・ペイジ自伝』サチェル・ペイジ著、佐山和夫訳(1995年/草思社)😁😳🤔🤓
22『レニ・リーフェンシュタールの嘘と真実』スティーヴン・バック著、野中邦子訳(2009年/清流出版)😁😳🤔🤓
21『回想』レニ・リーフェンシュタール著、椛島則子訳(1991年/文藝春秋)😁😳🤔🤓
20『わが母なるロージー』ピエール・ルメートル著、橘明美訳(2019年/文藝春秋)😁
19『監禁面接』ピエール・ルメートル著、橘明美訳(2018年/文藝春秋)😁
18『バグダードのフランケンシュタイン』アフマド・サアダーウィー著、柳谷あゆみ訳(2020年/集英社)😁😳🤓🤔
17『悔いなきわが映画人生』岡田茂(2001年/財界研究所)🤔😞
16『映画界のドン 岡田茂の活動屋人生』文化通信社編著(2012年/ヤマハミュージックメディア)😁😳🤓🤔
15『波乱万丈の映画人生 岡田茂自伝』岡田茂(2004年/角川書店)😁😳🤓
14『戦前昭和の猟奇事件』小池新(2021年/文藝春秋)😁😳😱🤔🤓
13『喰うか喰われるか 私の山口組体験』溝口敦(2021年/講談社)😁😳😱🤔🤓
12『野球王タイ・カップ自伝』タイ・カップ、アル・スタンプ著、内村祐之訳(1971年/ベースボール・マガジン社)😁😳🤣🤔🤓
11『ラッパと呼ばれた男 映画プロデューサー永田雅一』鈴木晰也(1990年/キネマ旬報社)※😁😳🤓
10『一業一人伝 永田雅一』田中純一郎(1962年/時事通信社)😁😳🤓
9『無名の開幕投手 高橋ユニオンズエース・滝良彦の軌跡』佐藤啓(2020年/桜山社)😁🤓
8『臨場』横山秀夫(2007年/光文社)😁😢
7『第三の時効』横山秀夫(2003年/集英社)😁😳
6『顔 FACE』横山秀夫(2002年/徳間書店)😁😢
5『陰の季節』横山秀夫(1998年/文藝春秋)😁😢🤓
4『飼う人』柳美里(2021年/文藝春秋)😁😭🤔🤓
3『JR上野駅公園口』柳美里(2014年/河出書房新社)😁😭🤔🤓
2『芸人人語』太田光(2020年/朝日新聞出版)😁🤣🤔🤓
1『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳(2000年/草思社)😁😳🤔