髙橋と奥川の、若さが迸る投げ合いを見たかった⚾️

きょうのスタメン表、裏がベンチ入りメンバー表になっている

きょう、プロ野球で1試合だけ行われた東京ドームでの巨人-ヤクルト戦、3位と2位の対決という以上に、僕は若い投手同士の投げ合いを楽しみにしていた。
巨人の髙橋優貴は3年目の24歳、昨季は僅か1勝、通算でも6勝にとどまっていたが、今季はすでに自身初の2桁勝利、キャリアハイの10勝をマークしている。

この髙橋くん、今時珍しいぐらい、礼儀正しい選手なんですよ。
僕はコロナ前に囲み取材で何度か質問したことがある程度で、向こうも僕が何処の誰兵衛だかわかっていないと思うのだが、球場で目が合うと、必ずしっかり会釈をして寄越す。

周囲の同業者に聞いたら、彼は取材で顔を認識した記者にその日初めて会ったら、常に頭を下げてくるのだそうだ。
あのクリッとした目で見つめられ、ペコリと頭を下げられたら、こっちも反射的に会釈を返してしまうんですよね。

今年、DeNAに移籍して初勝利を挙げた宮国椋丞にも、髙橋に似たところがある。
それがどうしたと言われるかもしれないけれど、記者にはなかなか自分から挨拶しない選手も多い中、たまにそういう律儀で謙虚な若手がいると、年寄りの記者にとっては好感度が高く、つい応援したくなるものです。

一方、ヤクルトの2年目の20歳、奥川恭伸は星稜のエースだった高校時代に春夏連続で甲子園へ足を運び、昨年のヤクルト入団後も新人合同自主トレ初日に取材に行った。
昨季最終戦のデビュー戦は5失点KO、初勝利を挙げた今年4月の広島戦も10安打5失点と散々だったが、気がついたらいつの間にかチーム2位の6勝を挙げている。

そんな奥川と髙橋がどんな投手戦を見せてくれるか、ここは高津、原監督もしっかりと我慢して、最低限、責任投球回数の5回以上投げ続けさせてほしかった。
ところが、サンタナに2ランホームランを打たれ、1-3と2点リードされた四回、79球で原監督は髙橋を見限った。

髙橋は勝てばリーグ単独トップとなる11勝目を挙げられるところだったが、これで8月29日の中日戦で挙げた10勝目から3試合連続で勝ち星から遠ざかっている。
きょう勝てば勢いを取り戻せるきっかけになったのに、こんな試合が続いたら、髙橋自身が悪い流れにハマるのではないか。

残り試合が少なくなっている中、2位ヤクルトとの重要な試合で、髙橋個人の勝ちよりもチームの勝利を優先させた原監督の采配は理解できなくはない。
髙橋は二、三回と続けて先頭打者を四球で歩かせ、四回にも先頭の中村に初球をヒットされた直後にサンタナに一発を食らっていた。

原監督としては、投手交代でこれ以上の失点を食い止め、流れを変えようとしたんでしょうね。
が、結果論ではあるものの、代わったばかりの田中豊が、五回先頭の山田に初球本塁打を浴びた展開には、多くの巨人ファンがガックリきたはず。

ましてや、田中豊は3日前、前回登板した14日のDeNA戦でも、牧に勝負を決定づける手痛い一発を打たれたばかり。
優勝争いの大詰めにきて、自らゲームの流れを悪くするような悪手を打ったと言われても仕方がないだろう。

奥川は三回2死一塁で坂本を空振り三振に仕留めた

さて、奥川のほうは初回、自らの暴投や死球もあり、坂本のタイムリーで1点を先制されたものの、そこからは我慢強い投球で七回まで追加点を許さずに7勝目。
四回に得点圏に走者を背負ったが、ハイネマンを併殺打、ウィーラーを内野ゴロに抑えて波に乗り、五、六、七回をすべて3人で片づけた投球は見事だった。

奥川は試合後のヒーローインタビューで、「10連戦の一発目の試合だったので、何とか勝ちたいと思っていました」とホッとした表情。
プロ初の100球超えとなる自己最多の103球、6試合連続の無四球に「もっとたくさん投げられるように、これ(無四球)を継続していけるように頑張りたいです」とキッパリ。

ただ、試合のポイントを聞かれて、「まだ終わったばかりで頭の中が整理できてなくて、よく思い出せません」と話していたあたりはまだまだ初々しい。
とまれ、今後がますます期待できそうな快投でした。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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