ブルース・スプリングスティーンが1978年にリリースした4作目のアルバム『闇に吠える街』の30周年を記念して制作されたライブビデオ。
2009年12月13日、ボスの故郷ニュージャージー州アズベリー・パークのパラマウント・シアターにEストリートバンドのメンバーと集まり、曲順もアレンジも30年前とまったく変えず、完全にオリジナルのままでアルバムの全10曲を再演している。
前年08年、皮膚がんのために58歳で亡くなったダニー・フェデリシに代わってチャーリー・ジョルダーノがオルガンを担当している以外、Eストリート・バンドのメンバーも1978年当時のまま。
『ボーン・イン・ザ・USA』(1986年)から加わったスプリングスティーン夫人パティ・スキャルファ、ギターのニルス・ロフグレンは参加しておらず、2年後の11年に脳卒中により69歳で他界したサックスのクラレンス・クレモンズも、このライブでは元気なパフォーマンスを披露している。
また、WOWOW放送時の邦題には「ライブ」と銘打たれているが、観客は入れておらず、バンドとスタッフだけでスタジオ収録されたミュージック・ビデオに近い。
あえてすべてを30年前と同じスタイルにしているところに、ボスの『闇に吠える街』に対する強いこだわりがうかがえる。
1975年に3作目のアルバム『明日なき暴走』で大ブレークしたスプリングスティーンは、すぐにでもこの『闇に吠える街』を制作したかったのだそうだが、彼を世に出した最初のマネージャー、マイク・アペルは「4作目はライブアルバムにするべきだ」と強く主張。
悩んだスプリングスティーンが当時、彼を絶賛していたロック評論家ジョン・ランドーに相談すると、アペルはランドーをアルバム制作に関わらせることはできないと通告し、スプリングスティーンもアペルを解雇して、泥沼の法廷闘争に突入してしまった。
当時の詳細な経緯はマーク・エリオット著、高見展訳『メイキング・オブ・ブルース・スプリングスティーン 涙のサンダーロード』(1993年/大栄出版)に詳しく、よほどのボスのファンでもうんざりさせられるような法廷証言や証拠書類がこれでもかとばかりに詰め込まれている。
裁判中は新たなアルバムの制作を禁じられ、アペルが関わった『明日なき暴走』からの収入も凍結されるなど、スプリングスティーンにとっては人生で最も辛い日々だったかもしれない。
しかし、それだけに、3年間の雌伏の時を経て発表した『闇に吠える街』は大変エキサイティングで完成度の高いアルバムに仕上がった。
ここに収められた10曲のほとんどが今日までボスがツアーで歌い続けているスタンダード・ナンバーになっており、とりわけ1曲目の『バッドランズ』は『明日なき暴走』『ノー・サレンダー』と並ぶ最高クラスの名曲。
なお、アペルとスプリングスティーンは1986年に正式に和解。
この年はロックの殿堂が創立された年で、スプリングスティーンが殿堂入りした1999年にはアペルもセレモニーに招待されている。
オススメ度B。
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※再見、及び旧サイトからの再録
94『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・バルセロナ』(2003年/米)A
93『ブルース・スプリングスティーン ライブ・イン・ニューオリンズ2006~ニューオリンズ・ジャズ・フェスティバル』(2006年/米)B
92『ウエスタン・スターズ』(2019年/米)B
91『水上のフライト』(2020年/KADOKAWA)C
90『太陽は動かない』(2021年/ワーナー・ブラザース)C
89『ファナティック ハリウッドの狂愛者』(2019年/米)C
88『ミッドウェイ』(2019年/米、中、香、加)B
87『意志の勝利』(1934年/独)A
86『美の祭典』(1938年/独)B
85『民族の祭典』(1938年/独)A
84『お名前はアドルフ?』(2018年/独)B
83『黒い司法 0%からの奇跡』(2019年/米)A
82『野球少女』(2019年/韓)B
81『タイ・カップ』(1994年/米)A※
80『ゲット・アウト』(2017年/米)B※
79『アス』(2019年/米)C
78『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』(2018年/米)C
77『キング・オブ・ポルノ』(2000年/米)B※
76『怒りの葡萄』(1940年/米)A
75『パブリック 図書館の奇跡』(2018年/米)A
74『バクラウ 地図から消された村』(2019年/伯、仏)B
73『そして父になる』(2013年/ギャガ)A※
72『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
71『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
70『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
69『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
68『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
67『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
66『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
65『メメント』(2000年/米)B
64『プレステージ』(2006年/米)B
63『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※
61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C