太平洋戦争の帰趨を決定づけた日米のミッドウェイ海戦を、『インデペンデンス・デイ』(1996年)、『2012』(2009年)などディザスタームービーで知られるドイツ人ローランド・エメリッヒが監督した作品。
アメリカ本国での評判は芳しくなかったそうだが、日本人の僕としてはそれなりに見応えのある戦記物と評価したい。
冒頭で、のちに日本海軍の暗号を解読するアメリカ軍のエドウィン・レイトン少佐(パトリック・ウィルソン)が日本に留学中、山本五十六海軍大将(豊川悦司)と戦局の展望を語り合う場面が興味深い。
このとき、山本がレイトンに「アメリカと戦ったら日本は負けるだろう。国力が違う」と〝予言〟していた、というのは戦史に疎い僕には事実かどうかわからないが、なかなかのリアリティを感じさせる。
陸軍出身の東條英機(ヒロモト・イダ)が首相だったことから、陸軍主導で進められていた日米開戦論に山本と山口多聞中将(浅野忠信)が異論を唱えるくだりも、ハリウッド映画にしては丁寧で行き届いた描写と言える。
題材が題材だから、ヒットしてくれなければ困る日本での受け止め方を考慮した上での演出だとしても。
逆にリアリティーを損ねているのは、真珠湾攻撃以降、『2012』と同じようにすべてCG処理されている戦闘場面。
第6爆撃中隊長リチャード“ディック”・ベスト(エド・スクライン)が日本海軍の空母・飛龍に急降下爆撃するシーンなど、役者が熱演している半面、着弾を成功させる瞬間がRPGのようで、映画ならではの達成感やカタルシスに乏しい。
それでも、1976年版『ミッドウェイ』よりははるかにマシだった、と昭和のオールドファンは思います。
あっちは、元全米ライフル協会会長チャールトン・ヘストン演じるガース大佐という主人公が架空の人物だった上、公開当時から16年も前に日本が製作した『ハワイ・ミッドウェイ大海戦 太平洋の嵐』(1960年)から、日本側の出撃場面をパクってたんだから。
アメリカでの批評が芳しくなかったのは、100億円以上に上った製作費の大部分を実質的に中国が負担していたため、中国側に忖度したシーンが批評家やマスコミに不評を買ったためらしい。
確かに、東京大空襲に参加していたジミー・ドゥーリトル大佐(アーロン・エッカート)が日本占領地だった中国に不時着し、当地の中国人に救われたというあたりは、中国側に阿っている感がありあり。
登場人物は1976年版と違い、ほぼ実在の人物で、主役のスクラインやウィルソン、山本役の豊川をはじめ、ミニッツ大将役のウディ・ハレルソン、ハルゼー中将役のデニス・クエイドも好演。
ハルゼーが当時、あれほど重篤な皮膚病を患っていたことは初めて知りました。
オススメ度B。
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※再見、及び旧サイトからの再録
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5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
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1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C