映画業界誌〈映画ジャーナル〉(現文化通信ジャーナル)に1961〜1995年に渡って掲載された元東映社長・岡田茂へのインタビュー、対談、コラムを、岡田社長の死後に編集し、再構成した一冊。
インタビューは1972年以降、ほぼ毎年掲載された記事が収録されており、この時代から映画にハマった僕にとってはなかなか読み応えがあった。
監督や脚本家、出演している俳優と違って、社長にとっての映画はあくまでも商品。
『仁義なき戦い』(1973年)から始まった実録路線も「2〜3年しかもたないだろう」と冷徹に寿命を見定めた上で、『新仁義なき戦い 組長の首』(1975年)の公開を前にこう発言している。
「やくざの喧嘩なんぞ簡単なんだよ、組長の首とりゃ終わりだ。
狙われるのが怖いから、口ではえらそうなこといっても、いちばん手を打ちたがっているのが組長なんだ」
『柳生一族の陰謀』(1978年)の大ヒットで復活の狼煙を上げた大型時代劇路線も、やはり2年で頭打ち。
右翼の上映反対運動もあり、製作費5億円以上に対して興収3億円と大コケした『徳川一族の崩壊』(1980年)を、こう斬って捨てている。
「ひと言でいうと時代劇がヤングに受け入れられないということでしょう。
来た層は35〜36歳、結果20代が逃げたのは、題名も魅力がないし中身も魔力がないということですよ」
こうして岡田社長は、当時辣腕プロデューサーとして鳴らした角川春樹とタッグを組むことを決断。
その第1弾『セーラー服と機関銃』(1982年)は「12億円あがったら大成功」と見ていたら、19億円の大ヒットである。
「東宝の松岡功夫社長などもこの種のアイドル映画には10億円の大きなカベがあるといっておられ、ああそうだろうなと思ってたんですが、まあ、これが19億円いっちゃったんだからねえ。
やっぱり角川商法の文庫、映画、レコードの三位一体戦法の見事な勝利だった」
このほか、全国の東映系映画館のリニューアルや全社的な合理化など、会社経営の根幹にかかわる部分にも言及。
関連グッズの会社をつくっていくらぐらいの売り上げが上がれば何人ぐらいの社員が食えるようになるか、そのためには東映本体から何人削らなければならないか、次から次へとシビアで容赦ない発言が飛び出す。
僕が1986年以降35年間、禄を食んでいる新聞、出版業界もリストラの波に覆われているが、エンタメ企業の経営者にとって、合理化は好不況にかかわらず、常に継続して考えなければならない課題なのだろう。
そういう意味で、21年間お世話になった古巣・日刊現代の川鍋孝文社長を改めて思い出した。
😁😳🤓🤔
2021読書目録
面白かった😁 感動した😭 泣けた😢 笑った🤣 驚いた😳 癒された😌 怖かった😱 考えさせられた🤔 腹が立った😠 ほっこりした☺️ しんどかった😖 勉強になった🤓 ガッカリした😞
15『波乱万丈の映画人生 岡田茂自伝』岡田茂(2004年/角川書店)😁😳🤓
14『戦前昭和の猟奇事件』小池新(2021年/文藝春秋)😁😳😱🤔🤓
13『喰うか喰われるか 私の山口組体験』溝口敦(2021年/講談社)😁😳😱🤔🤓
12『野球王タイ・カップ自伝』タイ・カップ、アル・スタンプ著、内村祐之訳(1971年/ベースボール・マガジン社)😁😳🤣🤔🤓
11『ラッパと呼ばれた男 映画プロデューサー永田雅一』鈴木晰也(1990年/キネマ旬報社)※😁😳🤓
10『一業一人伝 永田雅一』田中純一郎(1962年/時事通信社)😁😳🤓
9『無名の開幕投手 高橋ユニオンズエース・滝良彦の軌跡』佐藤啓(2020年/桜山社)😁🤓
8『臨場』横山秀夫(2007年/光文社)😁😢
7『第三の時効』横山秀夫(2003年/集英社)😁😳
6『顔 FACE』横山秀夫(2002年/徳間書店)😁😢
5『陰の季節』横山秀夫(1998年/文藝春秋)😁😢🤓
4『飼う人』柳美里(2021年/文藝春秋)😁😭🤔🤓
3『JR上野駅公園口』柳美里(2014年/河出書房新社)😁😭🤔🤓
2『芸人人語』太田光(2020年/朝日新聞出版)😁🤣🤔🤓
1『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳(2000年/草思社)😁😳🤔🤓