『そして父になる』(WOWOW)🤗

120分 2013年 ギャガ

第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞、日本の映画賞も総なめにして大ヒットした作品。
いまさらながらですが、じっくり鑑賞してみて、ぼくも大変いい映画だと思いました。

題材は病院の新生児の取り違え事故。
今時そんなことが実際にあるのかと思ったら、これは看護師がお金持ちの夫婦を妬んだあげくの犯行と判明する。

取り違えられたひとり、6歳の野々宮慶多(二宮慶多)は父・良多(福山雅治)母・みどり(尾野真千子)の一人息子として育てられた。
もうひとりの斎木琉晴(黄升炫)は、父・雄大(リリー・フランキー)と母・ゆかり(真木よう子)がもうけた3人きょうだいの長男ということになっている。

一流建設会社に勤めるエリート設計士の野々宮は、東京都内の瀟洒なマンションに住み、息子のお受験に熱心なだけでなく、ピアノも習わせている。
一方の斎木は群馬の片田舎で暮らす町の電気屋の親父で、子供には習い事をさせるよりも一緒に遊ぶことが大事だと考えており、風がなくても凧を揚げるのがうまい。

世間で言えば福山は勝ち組の富裕層、フランキーは負け組の貧困層。
そんなふたりが互いの子供を〝本当の親〟の下へ戻すべく、反発し合いながらもコミュニケーションを重ねる。

斎木の生活は決して楽ではなく、野々宮に比べると学もカネもないが、子供と遊ぶ時間と体力を惜しまない。
それに引き換え、野々宮の生活は仕事が第一で、息子にも自分と同じようなエリート人生を歩んでゆくよう求めている。

慶多と琉晴をふたりとも自分が育てると言い出した野々宮に、斎木がぶつけるセリフが痛烈だ。

「負けたことのないやつってのは、本当に人の気持ちがわからないんだな!」

野々宮が東京のマンションに引き取った琉晴は、なかなか自分に懐いてくれない。
「ぼくはいつお父さん(斎木)のところへ帰れるの?」と聞いて、野々宮を答えに詰まらせる。

一方、斎木の下に戻された慶多は、自分が野々宮に捨てられたと思い込んだのか、野々宮が会いに行っても顔を合わせようとしなくなる。
いままでのように「慶多」と呼びかけても、もはやかつての息子は振り向いてくれない。

ここから、本当の父親になろうとする福山の努力が始まる。
ほんのちょっとしたセリフ、静かで丁寧な描写の積み重ねがジワジワと胸にこたえて、いったいこのふたりの子供、二組の親子はどうなるのかと、最後まで目が離せない。

なお、本作はハリウッドでスティーヴン・スピルバーグの製作会社ドリームワークスがリメイクすると伝えられていたが、昨年になってフォーカス・フィーチャーズが監督ルル・ワン、脚本サラ・ルールによるリメイクが決まったと報じられた。
こちらもどのような映画になるのか、いまから興味津々である。

お勧め度はA。

旧サイト:2014年11月30日(日)Pick-up記事を再録、修正

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

72『誰も知らない』(2004年/シネカノン)A※
71『歩いても 歩いても』(2008年/シネカノン)
70『東京オリンピック』(1965年/東宝)B※
69『弱虫ペダル』(2020年/松竹)B
68『ピンポン』(2002年/アスミック・エース)B
67『犬神家の一族』(2006年/東宝)B
66『華麗なる一族』(2021年/WOWOW)B
65『メメント』(2000年/米)B
64『プレステージ』(2006年/米)B
63『シン・ゴジラ』(2016年/米)A※
62『GODZILLA ゴジラ』(2014年/米)B※

61『見知らぬ乗客』(1951年/米)B
60『断崖』(1941年/米)B
59『間違えられた男』(1956年/米)B
58『下女』(1960年/韓)C
57『事故物件 恐い間取り』(2020年/松竹)C
56『マーウェン』(2019年/米)C
55『かもめ』(2018年/米)B
54『トッツィー』(1982年/米)A※
53『ジュディ 虹の彼方に』(2019年/米)B
52『ザ・ウォーク』(2015年/米)A※
51『マン・オン・ワイヤー』(2008年/米)B※
50『フリーソロ』(2018年/米)A
49『名も無き世界のエンドロール』(2021年/エイベックス・ピクチャーズ)B
48『ばるぼら』(2020年/日、独、英)C
47『武士道無残』(1960年/松竹)※
46『白い巨塔』(1966年/大映)A
45『バンクーバーの朝日』(2014年/東宝)A※
44『ホームランが聞こえた夏』(2011年/韓)B※
43『だれもが愛しいチャンピオン』(2019年/西)B
42『ライド・ライク・ア・ガール』(2019年/豪)B
41『シービスケット』(2003年/米)A※
40『6才のボクが、大人になるまで。』(2014年/米)A※
39『さらば冬のかもめ』(1973年/米)A※
38『30年後の同窓会』(2017年/米)A
37『ランボー ラスト・ブラッド』(2019年/米)C
36『ランボー 最後の戦場』(2008年/米)B
35『バケモノの子』(2015年/東宝)B
34『記憶屋 あなたを忘れない』(2020年/松竹)C
33『水曜日が消えた』(2020年/日活)C
32『永遠の門 ゴッホが見た未来』(2018年/米、英、仏)B
31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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