処女航海中の1912年4月15日、氷山に接触して沈没したタイタニックの新たな発掘ドキュメンタリー。
実はこのとき、中国人男性8人が乗船しており、うち6人が救出され、世界各国に散り散りになりながらも、逞しく生きていたという秘話が語られる。
1997年にこの沈没事故を映画化した『タイタニック』が大ヒット、アカデミー作品賞、監督賞を受賞したジェームズ・キャメロンがエグゼクティヴ・プロデューサーを務めており、自らナビゲーターとして登場。
キャメロンは製作当時からこの中国人のエピソードに興味を抱いており、彼らが救命艇のクルーに救出されるシーンも実際に撮影していたが、劇場公開版からはカットせざるを得なかったという。
前半ではその未公開シーンも紹介され、映画ファンにとっては大きな見どころのひとつになっている。
ただ、史実通りなのか、中国人生存者の存在を強調するためか、俳優にかなり時代がかった民族衣装を着せているので、公開時にこの場面を観たら、作品全体の雰囲気から浮いているような違和感を覚えたかもしれない。
彼ら中国人は三等船室の乗客で、船体のどのあたりにいたかも、タイタニックの図面を使って詳しく説明される。
タイタニックが沈没したとき、航海士たちの判断ミスや差別的な扱いにより、三等船室の乗客が多数犠牲になったことはよく知られているが、中国人たちは航海士の指示に逆らい、独自の判断で脱出に成功した。
女性や子供が優先されるべき救出作業において、中国人の成人男性6人が早い段階で救命艇に乗ることができたことについては、当時欧米諸国から批判の声もあがったという。
これはタイタニックの沈没が夜だったため、暗闇の中では救うべき乗客の性別や年齢を識別できなかったためらしい、という視点からの検証も興味深い。
ただし、母国中国をはじめ、アメリカ、カナダ、イギリスまで中国人生存者の行方を追った後半を日本人が面白いと思えるかどうかは、観る人によるだろう。
また、NHK放送版はオリジナル版より半分以上カットされているので、正当な評価もしにくい。
オススメ度C。