先月20日、1995年にBBCで放送されたダイアナ妃のインタビューは、マーティン・バシール記者が偽造文書によってダイアナ妃を騙して実現させたものだったとして、BBCとバシールが謝意を表明する、というニュースが報じられた。
このインタビューは当時、ダイアナ妃が「私たちの結婚生活には3人いた」と、チャールズ皇太子の愛人カミラの存在を初めて公に口にし、王室内部で様々なプレッシャーを受けていると明らかにした上で、「私は闘います。決して引き下がりません」と宣言して大反響を巻き起こした。
バシールはこのインタビューを成功させるため、ダイアナ妃の弟・スペンサー伯爵に接近。
ダイアナ妃の個人秘書パトリック・ジェフソンをはじめ、彼女が信頼を置く宮殿の人々が常に彼女を監視していて、王室から報酬を得ていると話し、その振込金額が記載された銀行明細を偽造してスペンサー伯爵に見せたことによって、ダイアナ妃にインタビューをする了解を得たのだという。
当時、ダイアナ妃をめぐる王室内のスキャンダルは世界的注目の的となっており、アメリカを代表するテレビインタビュアーのバーバラ・ウォルターズ、最近メガン妃とハリー王子にインタビューしたオプラ・ウインフリーのテレビ番組も再三熱心にオファーしていた。
そうした中、ウォルターズやウインフリーに比べるとまだまだ世界的知名度の低かったバシールのインタビューを、なぜダイアナ妃が受けたのか、当時から疑惑を持たれていたが、四半世紀後になってようやく真相が明らかにされたわけである。
しかし、ダイアナ妃は生前、インタビューに当たって自分はバシールから監視等に関する何の説明も受けておらず、銀行明細のような書類も見せられてはいない、と BBCに直筆の手紙を送付している。
また、バシールも取材方法に誤りがあったことは認めながらも、ダイアナ妃のインタビュー内容自体は「誇りに思っている」と語った(開き直った、とも言えるが)。
そうしたタイミングで放送された本作は、「世紀のインタビュー」以前、チャールズ皇太子とダイアナ妃の婚姻関係は結婚前から破綻していた経緯を改めて検証している。
まだインターネットのなかった時代、ダイアナ妃がらみのゴシップやスキャンダルはイギリスのタブロイド紙にとって格好のネタ、という以上の〝金の卵〟となり、当時は新聞がそれこそ飛ぶように売れたそうだ。
ダイアナ妃が36歳で交通事故死した際には、欧米諸国で大騒ぎになったのはもとより、日本でも号外が配られたほど。
イギリス国民の間でも依然としてダイアナ人気は根強く、ハリー王子とメガン妃が第2子の長女にダイアナを名を付けたというニュースには賛否両論が巻き起こった。
そういう意味では、ダイアナ妃はイギリス国民の記憶の中でいまなお生き続けている、と言えるかもしれない。
時節柄、ダイアナ時代以降の王室報道をおさらいするにはちょうどいいドキュメンタリーである(だから制作されたのだろうが)。
オススメ度B。