タイトルにある通り、「世界一豪華」と言われるノルウェーのハルデン刑務所の「内側」を克明に撮影したイギリスのドキュメンタリー。
1990年代、英国政府の刑務所担当大臣を務めていたアン・ウィディコムが案内役となり、「こんな刑務所があっていいのかしら?」と驚きながら、刑務所の中を詳細に紹介していく。
ハルデンは国内で2番目の規模を誇っており、収監されているのは殺人犯40人、強姦犯20人、子供への性的虐待犯20人、ほかに麻薬の密売犯などなど。
そういう凶悪犯たちが、ノルウェーではホテル並みの個室に入れられ、いわゆる〝ムショ暮らし〟とはかけ離れた服役生活を送っているのだ。
刑務所に足を踏み入れたウィディコムがまず驚いたのは、共用スペースから独房まで、窓にまったく鉄格子がないこと。
窓には分厚い強化ガラスがはまっていて割られることはない、脱走率も0%だという刑務官の説明に、ウィディコムは目を見開いて首をひねる。
独房に入ってみると、ベッドはビジネスホテル並みに快適そうで、壁には寝そべって見られるところにテレビが設置されている。
トイレ、シャワー付きのバスルームに加え、冷蔵庫まで完備されており、刑務所内のスーパーマーケットで購入した飲み物や食べ物を冷やしておくこともできると聞いて、ウィディコムは「ミニバーがないのが不思議なくらいよ」。
家族と会うための小部屋もゆったりくつろげるようになっており、ベッドやブランケットだけでなく、妻や恋人とセックスできるようにコンドームまで常備されている。
看守のための覗き窓はないのか、というウィディコムの質問に対する刑務官の答えは「ノー」。
囚人が手に職をつけ、生活費を稼ぐための工場があるのは当然として、この刑務所にはレコーディング・スタジオがあり、出所後にラッパーを目指している若者がラジオ局のプロデューサーの前で熱唱を披露したりしている。
もともと「ラップは嫌い」というウィディコムは、懲役5年の囚人に「ラップをダラダラ歌わせることに意味があるのか、何の罰になるのか」と疑問を唱える。
しかし、このように囚人を更生させる施策と待遇に重点を置いたノルウェーは、刑務所出所後の再犯率が世界で最も低い25%。
それに引き換え、刑務所はあくまで懲罰を与えるためのものだという方針の下、ウィディコムが刑務所担当相を務めたイギリスは倍以上の70%に上る。
もっとも、この状況が永遠に続くかどうかは誰にもわからないし、ノルウェーのやり方が正しいと証明されたわけでもない。
性善説と性悪説のどちらが正しいのか、答えは容易に見つからないとわかってはいるものの、改めて考えさせられた刑務所である。
オススメ度B。