2年ぶりの交流戦開幕、ウィーラーの陰で流れを引き寄せたのは?⚾️

巨人、試合前の打撃練習

昨季はコロナ禍ですべて中止となった交流戦、今季、東京ドームではどうにか観客を入れて開催にこぎつけた。
広島カープにクラスターが発生、マツダスタジアムで行われる予定だったきょうと明日の西武戦が延期になった折、巨人としてもより一層、気を引き締めてかからなければならないゲームである。

原監督はこの交流戦に備えて、バッテリコーチの入れ替えを断行。
かねて批判の矛先を向けていた相川コーチを三軍に降格させ、日本ハムで選手と指導者双方の経験を持つ実松コーチを一軍に昇格させた(二軍には三軍から加藤コーチが昇格)。

しかし、シーズン途中でこういう突然の〝緊急人事〟を行うと、浮き足立っているという印象を相手チームに与え、得てして逆効果になることも少なくない。
実松コーチも捕手の大城も意識過剰になり、戸郷がボコボコにされてしまう事態も十分考えられた。

戸郷は5回94球で6安打4失点だったから、この予想は半分ぐらい当たったと言っていい。
とくに、2点のリードをもらった四回、辰己、鈴木と2打者連続で長打を許し、自らの暴投と四球がらみでピンチを広げ、あげく島内に3ランを浴び、2-4と一度は逆転を許してしまったのはいただけない。

それでも、終わってみれば巨人が勝っていたこの試合、隠れたゲームメーカーは丸だった、と僕は思う。
6番・センターで出場したこの試合、前半はいいところがなかったが、後半はしっかりと流れを引き寄せるいい仕事をして見せた。

打席では序盤の2打席ノーヒットで、2点目を取った三回、追加点のほしい2死一塁のチャンスで左邪飛。
守備では先に書いた四回、辰己、鈴木の打球をグラブに当てながら、どちらも捕球できずに二塁打にしてしまった。

辰己の当たりはグラブの先っぽだったから仕方ないとしても、鈴木の打球は横っ飛びして、グラブの中で打球が跳ねていたから、しっかり確保してほしかったところだ(記録に文句をつけるつもりはないが)。
これで負けたら、戸郷が崩れたきっかけは丸の拙守にあった、という意地悪な見方も成立する。

などと考えていたら、巨人が四回にウィーラーの3ランで5-3と試合を引っ繰り返した直後の五回、丸が試合の流れを引き寄せるファインプレーをやって見せた。
1死一塁から浅村が放った鋭い打球がフェンスを直撃したかと思われた瞬間、見事にジャンピングキャッチ。

楽天・石井監督がリクエストすると、丸の素晴らしいプレーが何度もオーロラビジョンでリプレーされ、そのたびにスタンドから盛大な拍手が巻き起こる。
観客がいることを前提に行われるプロの興行、それもホーム球場で行われるゲームでは、こういうファンの盛り上がりが流れをグッと引き寄せるのだ。

巨人が一挙4点を挙げた七回も、丸は1死二、三塁から満塁とする貴重な四球を選んでいる。
これで塁を埋められ、余裕をなくした楽天・ブセニッツは、2死から2打者連続四球で流れを完全に巨人に渡してしまった。

打席の結果だけ見れば、この日の丸は僅か1安打で、ウィーラーのような試合を決定づける働きしたわけでも、ファンの記憶に残るような大活躍をしたわけでもない。
ただ、五回の守備のジャンピングキャッチ、七回の好機をつないだ四球の効果は決して小さくなかった。

まだ調子が上がらない中でも、ふだんは中軸を担っている選手として、最低限の仕事をしようとする丸の姿勢が、今夜の勝利を手繰り寄せる一助になった、と僕は勝手に考えている。
そういう意味では、丸のプレーに惜しみない拍手を送ったファンの力も大きかったかもしれない。

ウィーラーの第3打席は森原からセンターフライ
スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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