記者のひとりごと『阪神に時代の風』

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○心斎橋総合法律事務所報『道偕』2003年6月号掲載

阪神が強い。
この原稿を書いている5月中旬の巨人3連戦で2勝1敗と勝ち越し、27勝14敗1分け。貯金を今季最多の13とした。

阪神が貯金13とするのは日本一となった1985年以来、18年ぶりだ。
巨人は主力選手が故障で欠け、戦力的に落ちるとはいえ、見下すような勝ちっぷりだった。精神的にも優位に立っている。これは大きい。

この時点で巨人戦は7勝1敗1分け。今季は悲願の巨人戦勝ち越しも果たせそうだ。
元阪神監督の吉田義男さんは現役時代を振り返るといつも言うことがある。

「巨人戦は一つの生きがいでした。勝つと喜びが違う。
歓声も違いました。伝統の一戦と言われて張り切ったもんです」

しかし、このところずっと負け越してきた。戦力差、確かにそれも大きかっただろう。
それ以上に、「どうせ巨人には勝てないんだ」という負け犬根性がチームに浸透していた点が見逃せない。

吉田さんはその意識を気にかけていた。
それだけに、今季は「弱点を一掃するチャンス」と見ている。

阪神に時代の風が吹いている。ライバルが勝手にこけているからだ。
巨人は前述した通り、故障者が異常に多い。工藤、清水、元木、高橋由、ペタジーニ。

清原も出場はしているが、両足が悪い。こんなシーズンは見たことがない。
主力選手が軒並み頑健な阪神とは比べものにならない。今の戦力差なら阪神が勝って当然とも言えるだろう。

こんな機会は滅多にない。夏場を過ぎれば巨人の戦力は整ってくるはずだ。
それまでにどれだけ巨人をたたけるか。18年ぶりの優勝も見えてくる。

もう一つのライバル中日にも勢いがない。自慢だった投手力に誤算があった。
エース川上も故障。広島という苦手球団を作ったのも計算外だった。

阪神にすれば、だんご状態になるはずだったペナントレースが望外の独走状態になり、星野監督もうれしさ半分ととまどい半分といったところか。
ともかく、こんなチャンスはそうあるものではない。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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