記者のひとりごと『石毛監督解任』

☆当コンテンツについては〈上野隆 プロフィール〉をご参照ください。

○心斎橋総合法律事務所報『道偕』2003年5月号掲載

オリックスの石毛宏典監督(46=※編者注①本稿掲載当時)が4月23日、遠征中の札幌市で解任された。
札幌ドームで西武と戦い終えたあとの唐突な発表だった。

本人には3日前に伝えられていたという。
昨シーズン最下位に終わり、今シーズンも開幕4連敗を喫するなど、最下位に甘んじていた。

成績不振による解任は当然とは思うが、果たして監督だけの責任か。
割り切れなさも残る今回の人事だった。

石毛監督は優秀なプレーヤーだった。
ドラフト1位で西武に入団。勝負強い打撃と華麗なグラブさばきで、攻守に抜きんでた存在だった。

ベストナインを8度、ゴールでグラブ賞を10度獲得、西武の黄金時代を支えた。
オリックスで一時代を築いた仰木彬監督のあとに2002年から招かれ、青年監督としてさい配をふるった。

だが、50勝87敗と大きく負け越し、優勝した西武に39ゲーム差をつけられた。断トツの最下位だった。
阪急からオリックスになった1989年以来、初の最下位。

経済界の重鎮で知られる宮内義彦オーナーが不満を持ったのは当然だろう。
また吉井やマック鈴木に加え、オーティズ、ブラウンの新外国人選手を補強した今季もオープン戦から低迷し、公式戦に入っても浮上できない。

攻めては併殺打を連発し、守っては失策の連続。
勝てる試合を失い続けたとあっては、指揮官が首を切られるのも仕方なかった。

それでも私は、後味の悪さが残ることをあえて言いたい。
まずは戦力だ。昨シーズンの最下位は、あの戦力なら順当だった。

打線に迫力がまったくなかった。谷が目立つ程度。
他球団からなめられても仕方のない打線で、投手陣がどれだけ頑張ってももたないのは容易に予想できた。

それに今季の補強だが、両外国人もそれほどの力量は感じないし、中日から獲った山﨑も過去の選手だ。マック鈴木も見込み外れだった。
補強としては不十分だ。

おまけに解任と同時に次期監督(※編者注②前打撃コーチのレオン・リー)が発表される手際のよさ。
初めから首を切りたかったのだろう。

石毛監督にももちろん責任はある。
しかし、と、思考はまた堂々巡りする。

(※編者注③オリックスは2003年も低迷し、球団初の2年連続最下位。リー監督はシーズン終了後に辞任した)

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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