『永遠の門 ゴッホが見た未来』(WOWOW)😉

At Eternity’s Gate
111分 2018年 アメリカ、イギリス、フランス
日本公開:2019年 ギャガ、松竹

新表現主義画家として有名なジュリアン・シュナーベルが、ゴッホの生涯を独自の新解釈によって描いた伝記映画。
ゴッホを演じたウィレム・デフォーはヴェネツィア国際映画祭で主演男優賞を受賞し、アカデミー賞とゴールデングローブ賞にもノミネートされている。

デフォーは確かに大変な熱演で、弟テオ(ルパート・フレンド)、ゴーギャン(オスカー・アイザック)、居酒屋の女将ジヌー(エマニュエル・セニエ)、牧師(マッツ・ミケルセン)との対話のシーンが非常に素晴らしい。
俳優の顔を正面、右横、左横と角度を変えながらクローズアップで映し出したブノワ・デロームの映像も、静謐な迫力とでもいうべきものを感じさせる。

カンバスに油絵具を厚塗りしていくゴッホ独特の手法をリアルに再現している場面も大変興味深い。
これは映画史上最初の本格的ゴッホ映画『炎の人ゴッホ』(1956年・米)、ゴッホの画調をアニメ化した『ゴッホ 最期の手紙』(2017年・波、英、米)でも見られなかったアイデアで、さすが現役の画家が監督した本作ならではの見どころとなっている。

ただ、シュナーベルによる新解釈にはうなずけない部分も多い。
「耳そぎ事件」の真の動機がゴーギャンにあったとゴッホが告白するくだりや、長らく自殺説や事故説が唱えられてきた最期など、大胆な異説を唱えている割にはあっさりした描写になっていて、僕としては嚥下しにくい印象が残った。

ゴッホはジヌーにもらった居酒屋の帳簿をスケッチブック代わりに使っており、ゴッホの死後に返却されたが、ジヌーはその中身を広げて改めることのないままに他界。
この帳簿が発見されたのはゴッホの死から126年もたった2016年のことだった、というテロップが幕切れで提示される。

こちらはいかにも史実のように描かれているが、やはりシュナーベルの創作ではないのかという疑念も拭えない。
また、実際のゴッホは37歳で没しており、本作撮影時に63歳だったデフォーは、熱演ぶりは別として、いささか老け過ぎのような気もする。

オススメ度B。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

31『ブラック・クランズマン』(2018年/米)A
30『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019年/米)A
29『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/東映)C
28『残酷・異常・虐待物語 元禄女系図』(1969年/東映)B
27『徳川女系図』(1968年/東映)C
26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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