『徳川女系図』(WOWOW)🤨

90分 1968年 東映 R15+

2月のWOWOW特集〈大江戸官能絵巻〉の初っ端に放送された作品で、邦画史上初の大手映画会社によるポルノ時代劇大作。
当時、世間の批判をものともせずに製作を決めたプロデューサーは、のちに東映の社長となった映画界の傑物・岡田茂である。

五代将軍・綱吉(吉田輝雄)の御世、江戸城の大奥で繰り広げられる肉欲と乱行の日々が描かれる。
数十人の女優を江戸城のセットに集め、半裸で踊らせたり、褌姿にして相撲大会をやらせたりと、当時の東映ならではの大規模でバカバカしい見せ場がてんこ盛り。

岡田がこういう映画を作ろうとしたのは、任侠映画の興収が頭打ちになっていた当時、大蔵映画や国映の低予算ピンク映画が人気を集めており、そちらに奪われた男性ファンを取り戻そうと考えてのことだったという。
監督は高倉健の『網走番外地』(1965年)シリーズで知られる石井輝男で、本作の大ヒットを機にエログロ路線の巨匠へと転身していった。

ただし、東映の専属女優が抵抗を示したのか、肝心の綱吉と側室たちとの一対一のカラミは案外大人しい。
相撲大会の場面では乳房を晒す女中おさよ役(賀川雪絵)も、セックスシーンではほとんど肌を晒さないのだから拍子抜け。

綱吉は万里小路(有沢正子)に使われている新参の大奥女中おみつ(御影京子)にゾッコン。
しかし、おみつは万里小路と対立している常磐井(国景子)に妬まれ、蝋燭責めに遭った挙げ句、局部を焼かれて追放されてしまう。

この事件を機に人間不信に陥った綱吉は乱倫に走り、自分が手をつけた側室・定子(内田高子)を家臣の柳沢出羽守(南原宏治)に娶らせたり、牧野備後守(小池朝雄)に妻の阿久里(小畑道子)を伽に差し出させたりとやりたい放題。
しかし、東映の一般映画に出演している演技派男優の面々が、ひどく生真面目に演じているので、観ているうちにだんだん暗い気分になってしまう。

なお、相撲大会の場面では、〝女力士〟おきぬ役で、日活SM路線でブレークする前の谷ナオミが登場。
5人抜きで勝ち名乗りを受けている姿には思わずニヤニヤさせられました。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2021リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら🤨  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

26『狂った野獣』(1976年/東映)A
25『一度死んでみた』(2020年/松竹)B
24『ひとよ』(2019年/日活)C
23『パーフェクト・ワールド』(1993年/米)B
22『泣かないで』(1981年/米)C
21『追憶』(1973年/米)B
20『エベレスト 3D』(2015年/米、英、氷)B※
19『運命を分けたザイル』(2003年/英)A※
18『残された者 北の極地』(2018年/氷)C
17『トンネル 9000メートルの闘い』(2019年/諾)C
16『ザ・ワーズ 盗まれた人生』(2012年/米)A※
15『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』(2019年/仏、比)A
14『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン6』(2018年/米)C
13『大時計』(1948年/米)B
12『汚名』(1946年/米)B
11『マザーレス・ブルックリン』(2019年/米)B
10『エジソンズ・ゲーム』(2017年/米)C
9『ジョン・ウィック:パラベラム』(2019年/米)C
8『ジョン・ウィック:チャプター2』(2017年/米)B
7『ジョン・ウィック』(2014年/米)C
6『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年/米)C
5『宇宙戦争』(2005年/米)B
4『宇宙戦争』(1953年/米)B
3『宇宙戦争』(2019年/英)B
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
1『男はつらいよ お帰り 寅さん』(2019年/松竹)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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