BBCの記者、フランク・ガードナーはアメリカ同時多発テロ事件が起こった2001年、取材先のサウジアラビアでアルカイダの兵士による銃撃を受け、生涯半身不随の身となった。
夜、車を運転していた最中、前を走っていた車が止まり、降りてきた現地の男に呼び止められ、笑いかけられた矢先に狙撃されたという。
最初に肩、次に大腿骨、さらに4発の銃弾に撃ち抜かれた瞬間のことを、ガードナーは16年後の現在(本作撮影時の2017年)も詳細に記憶しているという。
同行していたカメラマンはガードナー以上の致命傷を負い、亡くなった。
ガードナーはもともと、ジャーナリストを志望していたわけではない。
学生時代から「旅をするために生きていた」と言うほど旅行好きで、モロッコ、アルジェリア、チュニジア、イエメン、ヨルダンなど、主に発展途上国を好んで訪ねていた。
「そうした国々で貧しい暮らしをしていた人たちほど、旅人の自分に優しく接してくれた」とガードナーは語る。
大学を卒業すると銀行に就職し、赴任先のバーレーンではマスタングを乗り回し、休日にはボート遊びに興じていた。
しかし、やがて「金融商品のセールスは自分のやりたい仕事ではない」と気づき、海外特派員への転職を決心。
ビデオカメラを購入し、「私はBBCのフランク・ガードナー、サウジアラビアからお送りします」などと語りかける姿を自撮りする練習を積んで、1990年台後半に望み通りBBCへの転職を果たした。
2000年、最初に特派員として派遣されたのはカイロだったが、常に危険と隣り合わせだった日常に妻と2人の子供が怯え、翌01年には帰国してロンドンに拠点を移す。
そのロンドンから、かつてリポートの練習をしていたサウジアラビアに出張していた最中、悲劇は起こった。
半身不随となったガードナーはBBCに復職後、海外特派員から安全保障担当編集委員へ社内異動。
トーク番組でコメンテーターを務めたり、自分と同じ身体の不自由な人たちへのインタビューを行ったり、自分の人生を暗転させた経験を少しでも役立てようと仕事を続ける。
現在は排泄もできないため、ガードナー自ら解説しながら、人工肛門で大便を便器に捨てている姿を見せているのには驚かされた。
車の運転は自分でできるが、取材対象のマンションに行くには、スタッフに車椅子ごと運び上げてもらわなければならず、BBCの社屋内でエレベーターに乗るのもままならない。
私生活では、長年献身的に介護してくれた妻と離婚。
身体が自由に動いていたころを懐かしみ、「昔、旅先で撮った写真を見ると胸が痛む」と嘆きながら、それでもガードナーは仕事を続け、新しいパートナーを見つけようと前向きに生き続ける。
最初は大変だろうなあ、と思いながら観ていたが、最後になって登場するガードナーの新しい恋人がなかなかの美人。
このときだけは、この野郎! と思ってしまった。
オススメ度B。