『顔 FACE』横山秀夫😁😢

発行:徳間書店 徳間文庫 定価590円=税別
第1刷:2005年4月15日 第23刷:2012年11月10日
単行本発行:2002年10月 徳間書店

前項『陰の季節』(1998年)に収録された『黒い線』の登場人物、23歳の駆け出しの婦警、平野瑞穂を主人公に据えた〈D県警シリーズ〉の連作短編集。
初登場した前作で無断欠勤と失踪騒ぎを起こした瑞穂は、半年間の休職ののち、鑑識課から広報担当に異動させられ、マスコミの対応に追われている。

プロローグで瑞穂が婦警に憧れていたことが強調され、巻頭の『魔女狩り』で志を失った同僚との葛藤が描かれる。
最も痛切なのは『決別の春』で、放火事件にまつわる広報活動に関わっていた瑞穂が、かつて死傷者を出した放火事件の裏側に隠されていた深刻なDVと性的虐待の事実に直面する。

『疑惑のデッサン』は、かつて似顔絵の捏造を強要された瑞穂が、ふたたび〝似過ぎている似顔絵〟の疑惑と対峙する一篇。
瑞穂が心の拠りどころにしている画廊に飾られた絵画、井戸を覗き込む女性の表情が印象に残る。

横山作品に登場するキャラクターはいずれも仕事に対する忠誠心が強過ぎるあまり、上司や同僚と衝突することが多い。
瑞穂という女性が主人公の本書ではとりわけその傾向が強く、彼女がめげそうになるたび、読んでいるこちらも、頑張れよ、と声をかけたくなる。

ところで、僕が書いた唯一のミステリー小説『情報源』(2006年/講談社)の主人公も女性だったんだよね。
面白さや完成度は横山作品とは比べ物にならないけれど、実は当初、シリーズ化の話もあったことを懐かしく思い出しました。

😁😢

2021読書目録
面白かった😁 感動した😭 泣けた😢 笑った🤣 驚いた😳 癒された😌 怖かった😱 考えさせられた🤔 腹が立った😠 ほっこりした☺️ しんどかった😖 勉強になった🤓 ガッカリした😞

5『陰の季節』横山秀夫(1998年/文藝春秋)😁😢🤓
4『飼う人』柳美里(2021年/文藝春秋)😁😭🤔🤓
3『JR上野駅公園口』柳美里(2014年/河出書房新社)😁😭🤔🤓
2『芸人人語』太田光(2020年/朝日新聞出版)😁🤣🤔🤓
1『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』ジャレド・ダイアモンド著、倉骨彰訳(2000年/草思社)😁😳🤔🤓

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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