誰もが知っているSF小説の古典、H・G・ウェルズの同題原作小説を、ウェルズの母国イギリスの国営放送BBCが映像化したテレビドラマ。
アメリカで映画化された同題作品は1953年版、2005年版ともに舞台が現代のアメリカに置き換えられていたが、本作は原作と同じ20世紀初頭のイギリスに火星人が襲来する。
しかし、いまさらよく知られた登場人物やストーリーまで原作と同じにするわけにはいかなかったらしく、なかなか大胆な改変が施されている。
主人公兼ナレーターは天文愛好家の女性エイミー(エレノア・トムリンソン)で、既婚者の新聞記者ジョージ(レイフ・スポール)と駆け落ちしており、妊娠中という設定。
ふたりが暮らしているロンドン郊外の小さな街ウォーキングに、火星から飛来した隕石が落下し、やがて内部から火星人の操る3本足のキリング・マシーンが登場する、というくだりは原作とほぼ同じ。
製作費12億円という触れ込みだけあり、火星人のマシーンは非常によくできていて、映画館で観たらかなりの迫力を感じさせただろう。
テレビドラマだから市民が殺される場面はおとなしいものだろうと思ったら、ジョージの兄フレデリック(ルパート・グレイヴス)やメイドのメアリー(フレヤ・アラン)が死んでしまうシーンは結構リアルで生々しい。
マシーンがロンドンにやってきて、のっしのっしと歩きながら黒い毒ガスを撒き散らすくだりも、大変精巧なVFX、クレイグ・ヴィヴァイアスという監督の演出によって、なかなかのスリルとサスペンスを感じさせる。
しかし、ピーター・ハーネスというライターのシナリオはいささか奇を衒い過ぎで、第2話の途中からいきなり時間が飛び、エイミーが4〜5歳の息子を連れて現れたのには面食らった。
原作と同様、火星人は空気中のバクテリアに全滅させられたらしいのだが、それから数年後、世界は彼らが撒き散らした病原菌によって疫病が蔓延し、食料となる農作物も枯れ果て、人類は遠からず死に絶えようとしている、ということが、観ているうちにわかってくる。
これ以後、ストーリーはエイミーの回想という形で進むのだが、この語り口はあまりにも回りくどい。
原作通り、火星人はバクテリアにやられて、みんなあっけなく死んでしまいました、チャンチャン、という終わり方にはいまさらできなかった、という製作者の意図や事情は理解できるが、変に行ったり来たりせず、最初から最後まで時系列に沿ったストーリーにすれば、もっと面白くなったように思う。
オススメ度B。
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※再見、及び旧サイトからの再録
2『AI崩壊』(2020年/ワーナー・ブラザース)B
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