『サニー/32』(WOWOW)😏

110分 2018年 日活

2004年、佐世保市立小学校6年生の女子児童が同級生の女子児童をカッターナイフで刺殺した、現実の殺人事件をモチーフとした作品。
映画化された本作では、事件当時11歳だった殺人犯の女児が24歳に成長し、ネットの世界で神格化され、「サニー」という一種の〝尊称〟をつけられている、という設定でストーリーが組み立てられている。

ストーカーにつきまとわれていた中学校教師の主人公・藤井赤理(あかり、北原里英)は24歳の誕生日の夜、突然誘拐されてしまう。
自分をさらった犯人グループ、柏原勲(ピエール瀧)や小田武(リリー・フランキー)は、赤理をサニーと勘違いしていて、自分たちが望むように振る舞えと強要し、赤理が拒むと暴力を振るう。

赤理は仕方なく、柏原と小田の要求に答え、彼らの用意していたドレスを身に纏い、サニーとなってニコニコ動画に登場。
そこへサニー信者たちから熱烈な投稿が集まるようになると、柏原は彼らを山中の廃屋に集め、ファンミーティングのような集会を開催する。

そこへ突然、14年前にサニーに妹を殺されたという上島ひろみ(カトウシンスケ)が乱入し、赤理に復讐しようと襲いかかる。
ところが、上島は赤理を刺そうとして、集会に参加していた医師・寺脇壮一(山崎銀之丞)を誤って殺害。

そんな騒ぎの最中、一部始終がドローンで盗み撮りされていたことが発覚。
柏原たちはドローンをコントロールしていた百瀬貴之(加部亜門)を捕まえようとするが、あべこべにスタンガンで失神させられてしまう。

百瀬は赤理にもスタンガンを向け、YouTubeで自分のインタビューに答えるよう脅すが、今度は逆に、百瀬が赤理の静電気で気を失ってしまった。
事ここに至って、赤理はサニーにキャラ変することを決意、縛り上げた柏原たちを散々殴りつけ、「みんながわたしをサニーと呼ぶなら、わたしはサニーだ!」と叫ぶ。

監督・白石和彌、脚本・高橋泉は前項『凶悪』でも組んでいたコンビで、矢継ぎ早に場面をつなぎ、先を読ませずに観客を引っ張っていく手際は本作でも健在。
ただし、『凶悪』の主人公の記者が執拗に取材を続ける動機が不明だったように、本作でもストーリーの根幹となる部分に決定的な欠点がある。

そもそも日本の法律上、11歳で同級生を刺殺した女児が教職につけるわけがないということを、知的障害を抱えた小田はともかく、柏原、寺脇、百瀬らがわかっていない、という設定自体があまりに不自然。
また、赤理を演じる元AKB48の北原里英が、演技力不足という以前のミスマッチで、いくら目を向いて大声をあげても、瀧の顔を血が流れるほど殴りつけても、まったく迫力もリアリティーも感じられない。

スーパーバイザーとして秋元康がクレジットされているので、本物のアイドルに「犯罪史上最も可愛い」と言われた殺人犯アイドルを演じさせたら、アイドル映画としても犯罪サスペンスとしても独特の面白味が出るだろう、とでも考えたのか。
しかし、結果はアイデア倒れに終わってしまった、という以前に、アイデア自体が勘違いの産物だったんじゃないか。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録

138『凶悪』(2013年/日活)B
137『ほえる犬は噛まない』(2000年/韓)C
136『暗黒の恐怖』(1950年/米)C※
135『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2015年/米)A※
134『フューリー』(2014年/米)C※
133『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』(2012年/露)B※
132『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(2019年/露)C
131『ゾンビ・ガール』(2015年/米)B※
130『狼男アメリカン』(1981年/米)B※
129『ウルフ』(1994年/米)B
128『パルプ・フィクション』(1994年/米)A
127『トゥルー・クライム』(1999年/米)C
126『ブラッド・ワーク』(2002年/米)B
125『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン4』(2016年/米)B
124『ザ・コミー・ルール 元FBI長官の告白』(2020年/米)B
123『ジェミニマン』(2019年/米)B
122『ガール・イン・ザ・ミラー』(2019年/加)B
121『ドッペルゲンガー』(2003年/アミューズピクチャーズ)B
120『屍人荘の殺人』(2019年/東宝)B
119『ドクター・スリープ』(2019年/米)B
118『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実』(2013年/米)A※
117『疑惑のチャンピオン』(2015年/英、仏)B※
116『陽だまりのグラウンド』(2001年/米)B
115『ホテル・ムンバイ』(2019年/豪、印、米)A
114『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年/松竹)B
113『閉鎖病棟−それぞれの朝−』(2019年/東映)C
112『真実』(2019年/仏、日)A
111『氷の微笑』(1992年/米)B
110『チャーリーズ・エンジェル』(2019年/米)C
109『FBI:特別捜査班 シーズン1 #22対決の時』(2019年/米)C
108『FBI:特別捜査班 シーズン1 #21隠された顔』(2019年/米)B
107『FBI:特別捜査班 シーズン1 #20エジプトの要人』(2019年/米)B
106『轢き逃げ 最高の最悪な日々』(2019年/東宝)B
105『蜜蜂と遠雷』(2019年/東宝)B
104『ワン・カップ・オブ・コーヒー 栄光のマウンド』(1991年/米)A
103『ドリーム・ゲーム 夢を追う男』(1991年/米)B※
102『スラッガーズ・ワイフ』(1985年/米)B
101『死霊のはらわた』(2013年/米)C※
100『死霊のはらわた』(1981年/米)A※
99『脱出』(1972年/米)A※
98『ラスト・ムービースター』(2018年/米)B
97『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン3』(2015年/米)A
96『FBI:特別捜査官 シーズン1 #19白い悪魔』(2019年/米)B
95『FBI:特別捜査官 シーズン1 #18ラクロイ捜査官』(2019年/米)C
94『FBI:特別捜査班 シーズン1 #17秘密のデート』(2019年/米)C
93『世界の涯ての鼓動』(2017年/独、仏、西、米)C
92『殺人鬼を飼う女』(2019年/KADOKAWA)D
91『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)A※
90『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年/米)B
89『ラスト、コーション』(2007年/台、香、米)A
88『サンセット大通り』(1950年/米)A※
87『深夜の告白』(1944年/米)A
86『救命艇』(1944年/米)B※
85『第3逃亡者』(1937年/英)B※
84『サボタージュ』(1936年/英)B※
83『三十九夜』(1935年/英)A※
82『ファミリー・プロット』(1976年/米)A※
81『引き裂かれたカーテン』(1966年/米)C
80『大いなる勇者』(1972年/米)A※
79『さらば愛しきアウトロー』(2018年/米)A
78『インターステラー』(2014年/米)A
77『アド・アストラ』(2019年/米)B
76『FBI:特別捜査班 シーズン1 #16ラザロの誤算』(2019年/米)C
75『FBI:特別捜査班 シーズン1 #15ウォール街と爆弾』(2019年/米)C
74『FBI:特別捜査班 シーズン1 #14謎のランナー』(2019年/米)D
73『FBI:特別捜査班 シーズン1 #13失われた家族』(2019年/米)D
72『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン2』(2014年/米)A
71『記憶にございません!』(2019年/東宝)B
70『新聞記者』(2019年/スターサンズ、イオンエンターテイメント)B
69『復活の日』(1980年/東宝)B
68『100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!』(2004年/米)B
67『ロケットマン』(2019年/米)B
66『ゴールデン・リバー』(2018年/米、仏、羅、西)B
65『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
64『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
63『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
62『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
61『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
60『女王蜂』(1978年/東宝)C
59『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
58『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
57『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
56『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
55『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
54『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
53『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
52『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
51『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
50『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
49『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
48『ザ・ボート』(2018年/馬)B
47『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
46『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
45『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
44『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
43『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
42『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
41『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
40『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
39『下妻物語』(2004年/東宝)A
38『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
37『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
36『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
35『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
34『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
33『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
32『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
31『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
30『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
29『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
28『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
27『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
26『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
25『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
24『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
23『大脱出2』(2018年/中、米)D
22『大脱出』(2013年/米)B
21『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
20『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
19『グリーンブック』(2018年/米)A
18『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
17『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
16『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
15『海にかかる霧』(2014年/韓)A※
14『スノーピアサー』(2013年/韓、米、仏)A※

13『前科者』(1939年/米)C
12『化石の森』(1936年/米)B
11『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B※
10『チャンピオン』(1951年/米)B※

9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A 

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
先頭に戻る