2000年6月13〜15日に行われた史上初の南北首脳会談の裏側で何があり、その後の両国間にどのような影響を及ぼしたかを解説したドキュメンタリー。
こういう半島問題モノは、観る人が観ればツッコミを入れたくなる部分が多いのだろうが、僕のようなレベルの視聴者にとっては、とにかくわかりやすいことが一番である。
キム・デジュン大統領周辺の証言者は、大統領の右腕と言われた元国家情報院長イム・ドンウォン、元大統領府報道官パク・ジュンヨン、30年近く北朝鮮問題を専門に取材してきた記者イ・ヨンジョン。
北朝鮮が韓国側からのアプローチになかなか応じず、ようやく会談に同意したと思ったら、キム・ジョンイル総書記が事前の共同宣言の合意確認を拒否した上、キム・デジュン大統領がキム・イルソンの墓に参拝することを要求。
キム・デジュンはともかく会談を実現させることが先決だからと、墓前参拝への返事を保留してピョンヤンへ飛んだ。
到着してみると、事前に知らされていなかったキム・ジョンイルが出迎えに登場し、盛大なパレードで歓迎された直後、会談の会場となった迎賓館で韓国側のマスコミが締め出されるという事態が発生。
本格的な会談に入ると、キム・ジョンイルがいきなり喧嘩腰でキム・デジュンに無理難題を吹っかけてきたと、イム・ドンウォンは語る。
その半面、キム・ジョンイルは韓国マスコミのためにキム・デジュンとの〝合意セレモニー〟の撮影に応じたり、キム・デジュンに対するキム・イルソンの墓前参拝への要求を取り下げたりと、当初の強硬な態度を軟化させていた。
ただ、会談後の晩餐会でキム・ジョンイルがイム・ドンヨンを呼び寄せ、「墓前参拝はしなくても大丈夫だ、あなたの勝ちだ」と耳打ちした、というエピソードは、この番組を観ただけでは鵜呑みにできない。
現書記長キム・ジョンナムがこの番組を観たら激怒したことだろう。
その後、韓国側の国家情報院専門記者キム・ダンの取材により、南北首脳会談の裏側で、韓国の大財閥・現代(ヒュンデ)グループから北朝鮮に2240億ウォン(約211億円)もの大金が送金されていたことが発覚。
キム・デジュンは南北首脳合意をカネで買ったのかと自国のマスコミに批判され、すべての合意事項は水泡に帰してしまった。
それから18年後、2018年4月27日に実現したムン・ジェインとキム・ジョンウンとの首脳会談も、結局は同じような経緯を辿った。
大変興味深く、素人にもよくわかるように構成されてはいるが、証言者が脱北者も含めて韓国側ばかりなので、客観的に評価するのは難しい。
オススメ度B。