東京国立博物館へ行ってきた②特別展『工藝2020−自然と美のかたち−』編

東京国立博物館・表慶館、明治41(1908)年竣工=重要文化財

きのう、東京国立博物館に足を運んだ主目的は、友人に勧められたこの特別展を鑑賞することにありました。
「自然と美」との関わりというテーマで、現代の日本を代表する作家82人の陶磁、染織、漆工、金工、木竹工などが一堂に介した催し。

9月20日の特別内覧会には大勢の報道陣が参加。
主催の読売新聞社からは山口寿一・読売新聞グループ本社社長(巨人のオーナーでもある)が出席し、作家が語る作品に込めた思いに耳を傾けていたそうです。

表慶館は明治33年、大正天皇(当時皇太子)のご成婚を祝って建てられた古式床しい建築物で、現在は重要文化財に指定されている。
ここに建築家・伊東豊雄氏がデザインした展示台が設置され、ふつうの美術館とも博物館とも違う、独特で不思議な空間を現出させた。

展示会は4章構成になっており、工芸品の素材、色調、テーマによって各章ごとにフロアが分かれている。
出品している作家は不勉強にして私が知らなかった方々ばかりだが、公式ホームページによれば、日展を中心に活躍しており、数々の賞を受賞している人が多いようだ。

以下、素人なり感じたことを備忘録としてまとめておきます。
常設展示と違い、撮影は禁止だったので画像はありません、悪しからず。

第1章『金は永遠に光り輝き、銀は高貴さに輝く』では、文字通り金銀を素材とした工芸品が並ぶ。
正直、門外漢の私には一目見て理解できるほどの素養がないんですが。

そうした中でも宮田亮平氏のイルカを象った作品『生と静』には惹かれるものを感じた。
モチーフは宮田氏がバハマ諸島で見た海面に跳ねるイルカの親子で、ステンレスの上に金箔を乗せたデザインが生命力を表している。

村田好謙氏の漆工作品『風と光と水』も、それぞれのモチーフが目の前に浮かび上がってくるような作品で、私のような素人にもわかりやすかった。
奥田小由女(さゆめ)氏が東日本大震災の被災者に対する哀悼と慰霊の思いを込めた人形『海から天空へ』も、独自の色胡粉による質感が素晴らしく、すんなりと鑑賞者の心の内へ入ってくる作品でしょう。

しかし、第2章『黒はすべての色を内に吸収し、白はすべての光を撥する』には難解な作品も少なくなかった。
藤田仁氏の『不思議な鳥』、山岸大成氏の『神々の座「出雲」』などは、どこが鳥でどこが「出雲」なのか、一見して理解できる人はかなり限られるのではないか。

友定聖雄氏のガラス作品『A Silent Voyage』、春山文典氏のアルミニウム作品『宙の響』なども、まじまじと見入るほどの魅力は感じても、きちんと理解して見ているのかと聞かれると口籠もってしまう。
皿、壺、着物のように、用途や目的がはっきりしている作品はごく普通にきれいだな、面白いな、と思えるんですけどね。

第3章『生命の赤、自然の気』は、フロアの入口にかかっていた伊藤裕司氏の漆工『赤富士』が迫力満点。
上原利丸氏の染織『酉・輪廻転生』、井隼慶人の染織『晩夏の池』、本間秀昭氏の竹工『波紋−2018』にも確かに「自然の気」が感じ取れた。

だが、林香君氏の陶磁『思惟』になると、工芸品というより難解な現代美術のオブジェのような印象を受ける。
公式ホームページで「作者の言葉」を読んでもまだ理解しにくい。

第4章『水の青は時空を超え、樹々と山々の緑は生命を息吹く』には、そういう現代美術的な作品が並んでいた。
入口に置かれた相武恒雄氏の金工『新しい未来へ』は、近年の天候異変への憂いと未来への希望を表したそうで、天辺に盛られた青い塊が目を引く。

樹木の生命力を静かに歌い上げているかのような渡辺洋子氏の人形『森の詩』、水の持つ神秘性とエネルギーを表現した原典生氏の七宝『浮遊する気配』には素直に感動できた。
しかし、三田村有純氏の漆工『炎立つ』などは、面白さ、力強さを感じる半面、わかるようでやっぱりわからない。

上野公園内の看板

ともかく、日ごろ野球ばかり見ていて、投げた打った、滑った転んだ、の世界に首まで浸かっているA先生には、大変いい勉強になりました。
観に行ってみませんか、と勧めてくれた友人に感謝、感謝。

さて、鑑賞後は某マスコミ関係者の友人と〈もつ鍋やましょう〉神楽坂店へ。
最近は夜の会食が少ないので、たまにこういう機会があると、ついつい食べ過ぎ、飲み過ぎちゃうんだよなぁ。

まずは乾杯!
胡麻鯖1600円
馬刺3種盛り2000円
もつ鍋1680円
〆は雑炊
スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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