スティーヴン・キングのホラー小説をスタンリー・キューブリックが映画化した大ヒット作『シャイニング』(1980年)から約40年後を描いた正統的続編。
『ブレードランナー2049』(2017年)、ターミネーター・シリーズの『新起動/ジェネシス』(2015年)、『ニューフェイト』(2019年)など、オリジナルからのタイムラグが長いパート2モノは得てして失敗するケースが多いが、本作はなかなか健闘している。
主人公は前作でジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)に殺されかけながらも生き延び、5歳の少年(ロジャー・デール・フロイド、前作はダニー・ロイド)から大人(ユアン・マクレガー)に成長したダン・トランス。
幼少期のトラウマを払拭できず、オーバールック・ホテルの237号室にいた女の腐乱死体の亡霊につきまとわれ、ニュージャージーで酒とドラッグに溺れる日々を送っていた。
幼少期に知り合い、いまも時々現れる老人ディック・ハロラン(カール・ランブリー)の亡霊に諭され、ダンはニューハンプシャー州のフレイジャーという街に移住。
ここで知り合った公園管理人ビリー・フリーマン(クリフ・カーティス)の援助を受け、彼に誘われて断酒会に参加し、昼はビリーのサポート、夜は終末医療を行うホスピスの介護士として働くようになる。
8年後、すっかり更生したダンの元へ、彼と同じ能力〝シャイニング〟を持った少女アブラ・ストーン(カイリー・カラン)からメッセージが届く。
彼女はシャイニングの能力を持った子どもたちを虐殺して〝生気〟を吸い取っているヴァンパイア集団トゥルー・ノット(「真実の絆」の意)がいることを察知し、ダンに知らせてきたのだ。
トゥルー・ノットのリーダーは自身も強いシャイニングの能力を持つローズ・ザ・ハット(レベッカ・ファーガソン)。
ボスは長老格のグランパ・フリック(カリル・ストルイケン)で、クロウ・ダディ(ザーン・マクラーノン)、スネークバイト・アンディ(エミリー・アリン・リンド)ら7人の配下がいる。
この類型的ながらも残忍でズル賢いヴァンパイアたちと、ダン&アブラのコンビが真っ向から対決。
クライマックスでは、ダンがは懐かしやオーバールック・ホテルにローズを引き込み、前作でジャック・トランスに取り憑いた亡霊たちもドッとやってきて、大立ち回りが繰り広げられる。
監督・脚本・編集の1人3役を務めたマイク・フラナガンはかなりの『シャイニング』フリークだったらしく、随所に前作へのオマージュを挿入している。
オープニングでダニー少年がカートに乗ってホテルの廊下を走り回るドリーショットを再現しているのをはじめ、要所要所で前作のウェンディ・カルロスによる主題曲を流したり、一本道を走ってゆく自動車を俯瞰で撮ったロングショットを挟んだりしているあたり、などなど。
ポスター&チラシに使われているマクレガーの写真も、前作でジャック・ニコルソンが女房のシェリー・デュヴァルを追いかけ回し、斧で叩き割ったドアの裂け目を、40年後にマクレガーが覗き込んでいるところ。
そのニコルソンをそそのかしたバーテンダー、ダニーを怖がらせた双子の少女の亡霊も登場し、巨大な迷路での盛り上がりもしっかり再現している。
前作の監督キューブリックは、敬虔なクリスチャンの原作者キングとは違い、徹底した無神論者で、生前には「これはトランス一家がゆっくりと静かに狂っていくだけの話だ」と語っている。
そのため、前作では亡霊やシャイニングなどは存在しないと決めつけてこそいないが、明らかに登場人物たちの幻覚や思い込み(にしか過ぎない)と取れるような描き方をしていた。
原作者のキングはそれが気に入らず、キューブリックの死後は映画版を再三批判。
そうした長年鬱積した不満から、キングが『シャイニング』を自分の世界として再構築したいという思いを募らせていたことも、すでに多くのライターや批評家も指摘している。
だからだろう、キングが満を持して原作を書き上げたこの続編では、いきなり悪役のトゥルー・ノットを登場させ、超常現象を前面に打ち出している。
前作をそれなりに評価している僕としては最初のうち、この導入部に違和感を感じていたのだが、フラナガンの話術と演出が非常に巧みで、途中からほとんど気にならなくなった。
ただし、主演が『スター・ウォーズ エピソード1〜3』(1999、2002、2005年)でベン・ケノービを演じたマクレガーだったこともあり、クライマックスのトゥルー・ノットとの対決がジェダイ騎士同士のチャンバラとダブって見えたのも確か。
また、ホラー映画としては前作と異なり、まったく怖くないから、2時間半もの上映時間を冗長で退屈と感じる人も少なくないだろう。
オススメ度B。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏 D=ヒマだ ったら😑
※再見、及び旧サイトからの再録
118『ランス・アームストロング ツール・ド・フランス7冠の真実』(2013年/米)A※
117『疑惑のチャンピオン』(2015年/英、仏)B※
116『陽だまりのグラウンド』(2001年/米)B※
115『ホテル・ムンバイ』(2019年/豪、印、米)A
114『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年/松竹)B
113『閉鎖病棟−それぞれの朝−』(2019年/東映)C
112『真実』(2019年/仏、日)A
111『氷の微笑』(1992年/米)B
110『チャーリーズ・エンジェル』(2019年/米)C
109『FBI:特別捜査班 シーズン1 #22対決の時』(2019年/米)C
108『FBI:特別捜査班 シーズン1 #21隠された顔』(2019年/米)B
107『FBI:特別捜査班 シーズン1 #20エジプトの要人』(2019年/米)B
106『轢き逃げ 最高の最悪な日々』(2019年/東宝)B
105『蜜蜂と遠雷』(2019年/東宝)B
104『ワン・カップ・オブ・コーヒー 栄光のマウンド』(1991年/米)A
103『ドリーム・ゲーム 夢を追う男』(1991年/米)B※
102『スラッガーズ・ワイフ』(1985年/米)B
101『死霊のはらわた』(2013年/米)C※
100『死霊のはらわた』(1981年/米)A※
99『脱出』(1972年/米)A※
98『ラスト・ムービースター』(2018年/米)B
97『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン3』(2015年/米)A
96『FBI:特別捜査官 シーズン1 #19白い悪魔』(2019年/米)B
95『FBI:特別捜査官 シーズン1 #18ラクロイ捜査官』(2019年/米)C
94『FBI:特別捜査班 シーズン1 #17秘密のデート』(2019年/米)C
93『世界の涯ての鼓動』(2017年/独、仏、西、米)C
92『殺人鬼を飼う女』(2019年/KADOKAWA)D
91『軍旗はためく下に』(1972年/東宝)A※
90『イングリッシュ・ペイシェント』(1996年/米)B
89『ラスト、コーション』(2007年/台、香、米)A
88『サンセット大通り』(1950年/米)A※
87『深夜の告白』(1944年/米)A
86『救命艇』(1944年/米)B※
85『第3逃亡者』(1937年/英)B※
84『サボタージュ』(1936年/英)B※
83『三十九夜』(1935年/英)A※
82『ファミリー・プロット』(1976年/米)A※
81『引き裂かれたカーテン』(1966年/米)C
80『大いなる勇者』(1972年/米)A※
79『さらば愛しきアウトロー』(2018年/米)A
78『インターステラー』(2014年/米)A※
77『アド・アストラ』(2019年/米)B
76『FBI:特別捜査班 シーズン1 #16ラザロの誤算』(2019年/米)C
75『FBI:特別捜査班 シーズン1 #15ウォール街と爆弾』(2019年/米)C
74『FBI:特別捜査班 シーズン1 #14謎のランナー』(2019年/米)D
73『FBI:特別捜査班 シーズン1 #13失われた家族』(2019年/米)D
72『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン2』(2014年/米)A
71『記憶にございません!』(2019年/東宝)B
70『新聞記者』(2019年/スターサンズ、イオンエンターテイメント)B
69『復活の日』(1980年/東宝)B※
68『100万ドルのホームランボール 捕った!盗られた!訴えた!』(2004年/米)B
67『ロケットマン』(2019年/米)B
66『ゴールデン・リバー』(2018年/米、仏、羅、西)B
65『FBI:特別捜査班 シーズン1 #12憎しみの炎』(2019年/米)B
64『FBI:特別捜査班 シーズン1 #11親愛なる友へ』(2019年/米)B
63『FBI:特別捜査班 シーズン1 #10武器商人の信条』(2018年/米)A
62『FBI:特別捜査班 シーズン1 #9死の極秘リスト』(2018年/米)B
61『病院坂の首縊りの家』(1979年/東宝)C
60『女王蜂』(1978年/東宝)C
59『メタモルフォーゼ 変身』(2019年/韓)C
58『シュラシック・ワールド 炎の王国』(2018年/米)C
57『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』(2013年/米)A
56『FBI:特別捜査班 シーズン1 #8主権を有する者』(2018年/米)C
55『FBI:特別捜査班 シーズン1 #7盗っ人の仁義』(2018年/米)B
54『FBI:特別捜査班 シーズン1 #6消えた子供』(2018年/米)B
53『FBI:特別捜査班 シーズン1 #5アローポイントの殺人』(2018年/米)A
52『アメリカン・プリズナー』(2017年/米)D
51『夜の訪問者』(1970年/伊、仏)D
50『運命は踊る』(2017年/以、独、仏、瑞)B
49『サスペクト−薄氷の狂気−』(2018年/加)C
48『ザ・ボート』(2018年/馬)B
47『アルキメデスの大戦』(2019年/東宝)B
46『Diner ダイナー』(2019年/ワーナー・ブラザース)C
45『ファントム・スレッド』(2017年/米)A
44『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年/米)B
43『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年/米)A
42『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年/米)A
41『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
40『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
39『下妻物語』(2004年/東宝)A
38『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
37『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
36『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
35『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
34『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
33『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
32『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
31『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
30『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
29『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
28『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
27『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
26『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A※
25『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
24『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
23『大脱出2』(2018年/中、米)D
22『大脱出』(2013年/米)B※
21『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
20『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
19『グリーンブック』(2018年/米)A
18『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
17『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
16『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
15『海にかかる霧』(2014年/韓)A※
14『スノーピアサー』(2013年/韓、米、仏)A※
13『前科者』(1939年/米)
12『化石の森』(1936年/米)B
11『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B※
10『チャンピオン』(1951年/米)B※
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A