2009年6月、エセ障害者団体「凛(りん)の会」に偽の障害者団体証明書を発行し、不正に郵便料金を安くさせるダイレクトメールを発送させたとして、厚労省の女性局長・村木厚子さんが大阪地検特捜部に逮捕された。
ところが、これがまったくの冤罪であり、検察官が証拠を捏造していたことまで発覚、あべこべに検察側が懲戒免職と逮捕に追い込まれてしまった。
あの事件から約10年が経過し、村木さんが改めて当時の経緯を詳しく振り返ったのがこの番組である。
こういう冤罪事件について、濡れ衣を着せられた当事者、及び家族(夫)、担当弁護士(弘中淳一郎氏)がテレビ番組でこれだけ赤裸々に語ったのは初めてではないだろうか。
否認を続ける村木さんに対し、痺れを切らした検察官が「認めたって大した罪ではないでしょう」と言い放って、村木さんが思わず悔し涙を流したというくだりが大変印象深い。
こういう司法の虐待を、笑みを交えながら語っているところに、村木さんの芯の強さと人間性を感じる。
ただし、番組としては、終盤に映画監督・周防正行氏が登場しているくだりには少々違和感を覚えた。
冤罪の怖さ、刑事裁判の理不尽さを描いた同氏の代表作『それでもボクはやってない』(2007年)の紹介や場面の挿入で、あからさまなネタバレをやっており、ここだけはもうちょっと配慮があってもよかったんじゃないか。
オススメ度A。