『平成プロ野球史 名勝負、事件、分岐点-記憶と記録でつづる30年-』共同通信社運動部編😁😳🤔🤓

共同通信社 190ページ 発行:2019年7月20日 定価1400円=税別

本書もまた4~5月の自粛期間中、Facebookの〈7 days Book Cover Challenge〉というリレー形式のブックレビューで、共同通信の運動部プロ野球デスク・石原秀知氏が紹介していた一冊。
石原氏自身が陣頭指揮を取り、共同の記者たちが平成年間に起こったプロ野球のトピックを改めて再取材した労作である。

単なる回顧録にとどまらず、名勝負や事件の当事者から貴重な証言を引き出し、あの日あの時、現場で何が起こっていたのか、巻頭から目から鱗の箴言や新事実が続出する。
平成元年に阪急から球団買収したオリックスの宮内オーナーが登場し、巨人に向けて放った(という意識はご本人にはないかもしれないが)コメントが強烈だ。

「(プロ野球界は平成年間に)フランチャイズが確立してきましたよね。
全部、ローカル球団になって、いまだにローカルじゃないと思っているのは巨人だけ。

スポーツビジネスにはローカル色がないといけない。
企業の広告宣伝費に使うなんて最も効率の悪い使い方なんです」

個人的に非常に興味深かったのは、2007年の日本シリーズ、完全試合達成目前で中日・山井が岩瀬に交代した場面を、初めて山井自身が自分の言葉で語っているくだり。
あの交代は当時、久しぶりに一般社会に波紋を広げるほどの議論を巻き起こしたが、当事者の山井が自ら真相を明かしたのは本書が初めてである。

各年ごとに「十大ニュース」が付いていて、グラウンド外で世間を賑わせたスキャンダルを網羅しているところも共同らしい。
平成2(1990)年の巨人・桑田の登板日漏洩疑惑、平成10(1998)年の巨人・長嶋監督続投問題、平成13(2001)年の夫人の脱税事件による阪神・野村監督辞任、平成15(2003)年の巨人・原監督の突然の辞任などは、スポーツ紙はもちろん一般紙でも再録を躊躇うところだろう。

プロ野球ファンのみならず、同業者のA先生としてもぜひ手元に置いておき、困ったときのネタ本にしたい一冊…と言ったら、勝手にパクるなと怒られるかな。
そういう意味では、価格が倍になってもいいから、もっと新たな証言や情報を盛り込んで分厚くしてもよかったんじゃないでしょうか。

😁😳🤔🤓

2020読書目録
面白かった😁 感動した😭 泣けた😢 笑った🤣 驚いた😳 癒された😌 怖かった😱 考えさせられた🤔 腹が立った😠 ほっこりした☺️ しんどかった😖 勉強になった🤓 ガッカリした😞

18『球界時評』万代隆(2008年/高知新聞社)😁🤔🤓
17『銀輪の巨人 GIANTジャイアント』(2012年/東洋経済新報社)😁🤔🤓
16『虫明亜呂無の本・1 L’arôme d’Aromu 肉体への憎しみ』虫明亜呂無著、玉木正之編(1991年/筑摩書房)😁😭🤔🤓
15『洞爺丸はなぜ沈んだか』(1980年/文藝春秋)😁😭😢🤔🤓😱
14『オッペンハイマー 原爆の父はなぜ水爆開発に反対したか』(1995年/中央公論新社)🤔🤓
13『「妖しの民」と生まれきて』笠原和夫(1998年/講談社)😁😭😢🤔🤓
12『太平洋の生還者』上前淳一郎(1980年/文藝春秋)😁😭😳🤔🤓😖
11『ヒトラー演説 熱狂の真実』(2014年/中央公論新社)😁😳🤔🤓
10『ペスト』ダニエル・デフォー著、平井正穂訳(1973年/中央公論新社)🤔🤓😖
9『ペスト』アルベール・カミュ著、宮崎嶺雄訳(1969年/新潮社)😁😭😢🤔🤓
8『復活の日』小松左京(1975年/角川書店)🤔🤓
7『感染症の世界史』石弘之(2019年/角川書店)😁😳😱🤔🤓
6『2000年の桜庭和志』柳澤健(2020年/文藝春秋)😁🤔🤓
5『夜のみだらな鳥』ホセ・ドノソ著、鼓直訳(1984年/集英社)😳🤓😱😖
4『石蹴り遊び』フリオ・コルタサル著、土岐恒二訳(1984年/集英社)😁🤓🤔😖 
3『らふ』森下くるみ(2010年/青志社)🤔☺️
2『最期のキス』古尾谷登志江(2004年/講談社)😢😳
1『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』奥山和由、春日太一(2019年/文藝春秋)😁😳🤔
 
※は再読、及び旧サイトからのレビュー再録

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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