初優勝・正代の陰に巨人OBアリ

ついこういう写真を撮りたくなる優勝でした

今場所、正代が優勝して良かった。
優勝のかかった一番の相手が新入幕の翔猿という取組がまた良くて、怖いもの知らずの翔猿に土俵際まで追い詰められながら、最後に逆転の突き落としを決めて勝った、というフィニッシュがまた、とても良かった。

正代が横綱や大関に勝って優勝しても、それはそれで盛り上がったに違いないのだが、今場所に限って言えば、どちらも優勝経験のない力士同士の激突だったことが、いつもとは違う感動をもたらしたと思う。
地元・熊本で、モニターの前で応援していたご両親の姿に共感を覚えた、というファンも多いのではないでしょうか。

そこでSNSにアップしたのがこの色紙。

第41代式守伊之助の書

これは高田川部屋付行司・第41代式守伊之助さんの書。
今年の初場所千秋楽の夜、ホテルニューオータニで開催された高田川部屋の新年会兼初場所千秋楽祝賀会のお楽しみ抽選会でいただいたものです。

ちなみに、僕の持っていた抽選券77番を引き当ててくれたのは高田川部屋の輝。
ほかにも色々な賞品があったんですが、初場所で2桁勝った(10勝5敗)同部屋の竜電、徳勝龍と最後まで優勝を争った正代の名前を伊之助さんが書いたこの色紙を選びました。

実は、正代を以前から熱心に応援している巨人OBの方がいる。
「ネガティヴ」というあだ名が付けられていたように、ここという勝負どころで弱気の虫が出るのが正代のウイークポイントだった。

そういう正代を、現役時代はピンチで四球を出しても動ぜず、コーチとしてもチームの優勝、日本一に貢献したこの巨人OBが励まし続けていたのだそうです。
いまごろは正代も巨人OBも祝杯を挙げながらさぞかし盛り上がっている…わけがないよね、こういうご時世では。

初場所千秋楽祝賀会で竜電関と一枚

なお、肝心の竜電は今場所6勝9敗で3場所連続負け越し。
今年最後の11月場所はぜひとも存在感を示してほしいものです!

以下は余談。
こういうコロナ禍の世の中だからこそ、これまで埋もれていた、芽が出なかった、チャンスに恵まれなかったアスリートが勝って喜ぶ姿は、人々の感動と元気を呼び起こすと思う。

そういう意味で、どれほど規模が小さくなっても、来年の東京オリンピック・パラリンピックは何としても開催してほしい。
そこでメダルを獲得した日本のアスリートは間違いなく、この国に活力を与え、歴史に語り継がれる存在になるはずだから。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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