第二次世界大戦末期の1943年9月、ナチス・ドイツがイタリア・ローマに侵攻し、この地でも情け容赦のないユダヤ人狩りを始める。
このとき、ユダヤ人たちを病院に匿い、架空の感染症「K症候群」に罹っていると偽って、親衛隊SSから守った医師たちの勇気ある行動を描いたドキュメンタリー。
いわゆる「大戦秘話」の一本で、この史実自体は非常に興味深い。
舞台はローマに程近いバチカン市国から3㎞ほど、バチカンが支配するティベリーナ島のファーテ・ベーネ・フラテッリ病院。
創設は1585年、病院名は「良い行いをせよ、兄弟」という意味。
大戦当時の院長はジョヴァンニ・ボロネオで、彼が雇ったイタリア人医師アドリアーノ・オッシチーニ、ユダヤ人医師ヴィットリオ・サチェルドーティの3人が〝K症候群作戦〟の中心メンバーである。
この病院と、大シナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)のあるローマのユダヤ人居住区との距離は僅か200m。
弱腰のローマ教皇ピウス12世が、〝中立〟を建前としてナチスとヒトラーに何の抗議もしなかったため、ナチスのユダヤ人狩りがエスカレートし、家を追われたユダヤ人たちはフラネッリ病院に駆け込むようになる。
ボロネオらフラテッリ病院の医師たちは、ユダヤ人たちを入院患者だと偽装して保護しようと画策。
ローマに侵攻してきたナチスのケッセルリンク将軍 カスパー親衛隊司令官の頭文字を取って、「K症候群」という架空の感染症をでっちあげた。
ボロネオらは「ひとたび感染したらインフルエンザのように咳、くしゃみ、発熱が続き、数日のうちに神経を蝕まれて死に至る」恐ろしい病気だとユダヤ人患者のカルテに記述。
この触れ込みにカスパー司令官も恐れをなし、最初のうちはドアを通して咳の音を聞いただけで、病室を見もせずに退散していったという。
しかし、こういうウソがいつまでも通用するはずはなく、ナチスが疑いを抱き始めたころ、連合国軍がローマに向かって進軍を開始。
果たして、連合国軍がローマを解放するのが早いか、ナチスがK症候群患者の入院病棟に踏み込むのが早いか、イタリア人医師たちとユダヤ人たちの命を賭けたぎりぎりのせめぎ合いが展開される。
という水面下の攻防は実にサスペンスフルで、物語としても面白いのだが、45分間の中に様々な要素を詰め込み過ぎた感が強く、観ている間は頭を整理しながら展開を追うのが結構大変。
また、当事者や遺族のインタビュー、当時のニュース映像、再現ドラマ、アニメーション、明らかに昔の映画から引っ張ってきたような映像がごちゃ混ぜになっており、作品としてのトーンが一貫していない。
それも道理で、原題で検索してみたら、もともとは80分の作品だったのを、NHKが番組枠に合わせて45分に短縮したらしい。
ぜひオリジナル版を観てみたいけれど、NHKは放送してくれないだろうな。
オススメ度C。