コロナ休業とモンゴルの思い出

風の旅行社から届いた封書

先日、〈風の旅行社〉というところから封書のお知らせが届きました。
封筒の表に貼ってある挨拶を読むと、4月6日から臨時休業しており、雇用調整助成金などで経営を維持しながら、新商品の開発に努めているそうです。

A先生がこの会社を利用したのは、もう11年も前の2009年7月。
AERA『現代の肖像』の取材で、モンゴルのウランバートルにある横綱・白鵬翔の自宅を訪ねた時のことだった。

モンゴルに行くのは初めてで、文字通り右も左もわからず、一時は白鵬一行ともはぐれてしまって右往左往。
これでは無駄足になってしまう、と冷や汗をかいていた中、一方ならぬお世話になったのが、風の旅行社モンゴル支社長のハグワ・シャグダルさんでした。

白鵬の実家で白鵬本人、白鵬の両親、日本語の達者なお姉さんにインタビューが終了したころには、お付き合いでウォッカを飲み過ぎてグデングデン。
翌日、モンゴル相撲の関連施設やスタジアム、太平洋戦争中にこの地で没した日本人兵士の墓地などを取材して回り、シャグダルさんに興味深い話をたくさんを教えてもらった。

7月11日の革命記念日、スポーツの祭典〈ナーダム〉が行われる中央スタジアム
モンゴル相撲の大会が行われる相撲会館
まだインフラを整える途上だったウランバートル市街
草原の裾野に並ぶウランバートル市民のゲルや住宅
元朝青龍が私費を投じて改築した日本人兵士の墓地と慰霊碑
観光名所〈ザイサンの丘〉で撮った記念写真

こうして振り返ると、AERA編集部をはじめ、横綱や風の旅行社には大変貴重な経験をさせてもらったと思う。
白鵬には「ここまで来たんだから、一緒にゴビ砂漠に行こう」と言われたんだけど、これはさすがに日程上無理だとお断りしました。

しかし、いまにしてみれば、自腹を切ってでも行っておくべきだったかな、と後悔の念も少々。
あのとき、散々お世話になり、チンギス・ハーン空港で別れたシャグダル支社長はいま、何をやってるんだろう。

東京商工リサーチの7月の発表によると、20年上半期(1〜6月)の宿泊業倒産件数は前年同期を実に140%上回る72件。
旅行業は7.1%増の15件で、2年連続で前年同期を上回った。

そうした中、新商品をアピールしている〈風の旅行社〉は23日から3日間、東京本社を臨時開業すると同社のホームページで知らせている。
もちろん、モンゴル旅行は当分は無理としても、また気軽にあの国へ行ける日が戻ってくることを願っています。


スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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