2017年にフランスのプロダクションZEDが制作し、NHKが19年から4度繰り返し放送しているドキュメンタリー。
最盛期でドイツ国民若年層の98%を吸収し、実に約800万人にまで膨れ上がったヒトラー・ユーゲントの盛衰が描かれている。
ヒトラー・ユーゲントはイギリス発祥のボーイスカウトにヒントを得てヒトラーが発足した青少年団で、1933年に首相となって権力を掌握すると、野党やカトリック教の同類の団体を次々に吸収合併。
最初のうちはサマーキャンプのような催しで少年たちを魅了し、やがてキャンプ地での戦争ゲームで兵士の予備軍に仕立て上げてゆく。
ナチスの権力が拡大し、第二次世界大戦において周辺欧米諸国への侵攻が始まると、洗脳教育もエスカレート。
ユダヤ人を抹殺しろという歌を青少年たちに覚えさせ、彼らが熱唱する姿が映し出されるくだりは非常に不気味である。
しかし、不謹慎な感想だと承知の上であえて書くと、カラーで再現されたユーゲントの若者たちの姿は大変凛々しく、美しく見える。
彼らに向かって「若いドイツ人は引き締まった身体でなければならない! 敏速さと丈夫さ、そして強靭さが必要だ!」などと演説をぶつヒトラーの姿も、毎度のことながら大きな見せ場となっていて、この独裁者ならではのカリスマ的雰囲気も漂い、見入ってしまうとともに惹きつけられてしまう。
そうした映像の合間に、いまでは90代に達した元ユーゲント・メンバーのインタビュー映像が挿入される。
ただし、ユーゲントのカラー化映像がきれい過ぎるためか、元メンバーの表情が高齢ゆえに淡々としているためか、ヒトラーのために若い命が戦場であたら無駄に散っていった、という酷薄な事実がいまひとつ胸に迫ってこない。
貴重な映像が多く、完成度の高いドキュメンタリーでもあるが、評価と感動の度合にはかなりの個人差があるだろう。
それにしても、戦後75年、ヒトラーをネタにしたドキュメンタリーは一向に後を断ちませんね。
オススメ度B。