『スパイダーマン:ホームカミング』(WOWOW)🤗

Spider-Man: Homecoming 133分 2017年 
アメリカ=ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント

マーベル・コミックスの実写映画版マーベル・シネマティック・ユニヴァース(MCU)・シリーズの第15作。
ただし、主人公のスパイダーマン以外、アベンジャーズのメンバーはほとんど登場しないため、独立した作品として楽しむこともできる。

ちょっとびっくりしたのは、主人公のピーター・パーカー(トム・ホランド)がどのようにして蜘蛛の超能力を身につけたのか、ピーター本人がセリフで簡単な説明をするだけで済ませていること。
アメリカではすでにサム・ライミ監督版3部作(2002〜07年)、マーク・ウェブ監督リブート版2部作(2012〜14年)が公開されており、5作すべてが大作でヒットもしていたから、もうみんなが知ってる前提なんぞ全部端折ってしまえ、とこのシリーズの元締ケヴィン・ファイギ(マーベル・スタジオ製作社長)が考えたのかしらん。

ピーターはトニー・スターク/アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr.)にアベンジャーズ入りを望んでおり、オープニングからしばらくは、ピーターが自撮りした動画を使ってトニーとの関係性を説明する、というなかなか凝った作りになっている。
ただ、ピーターとトニーが知り合った最初のきっかけは何だったのかについては、やはりはっきりとは説明されていない。

ただし、そうした本シリーズにおけるスパイダーマンの出自をバッサリ切り捨てた判断が、本作がMCUシリーズの中でも独立した作品として成功した要因のひとつでもある。
監督ジョン・ワッツ、ジョナサン・ゴールドスタインら脚本を書いたチームは、スパイダーマンのハードSF的側面より、ピーターの恋愛や高校生活を描いた青春コメディの側面に重点を置き、サム・ライミ版やマーク・ウェブ版とはまったく異なる面白さとテイストを前面に打ち出している。

ピーター役のホランドをはじめ、親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)、ミッドタウン高校のアイドル的存在リズ(ローラ・ハリアー)、いつもみんなと距離を置いているクールなMJ(ミシェル・ジョーンズ、ゼンデイヤ)など、同級生たちのキャラクターも大変魅力的。
そうした中、本作で最も効いているキャスティングはやはり、悪役バルチャーに持ってきた元バットマンにして元バードマン、マイケル・キートンだろう。

バルチャーはもともとスタークによって仕事を奪われ、生活費を稼ぐためにやむなく武器の密輸に手を染めたという経緯があり、根っからの悪役ではない。
このバルチャーの正体をピーターが偶然知ってしまうくだりは、ある意味、クライマックスの対決よりもよっぽど緊迫感に満ちたシーンになっている。

そんなバルチャーとの対決を通して、アベンジャーズに憧れていたピーターの心の中にも微妙な変化が生じる、という過程にも説得力がある。
エンディングは例によって思わせぶりな画像で締め括られており、バルチャーの再登板を予感させました。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏  D=ヒマだったら😑
※再見、及び旧サイトからの採録

41『ビリーブ 未来への大逆転』(2018年/米)B
40『ワンダー 君は太陽』(2017年/米)A
39『下妻物語』(2004年/東宝)A
38『コンフィデンスマンJP ロマンス編』(2019年/東宝)C
37『FBI:特別捜査班 シーズン1 #2緑の鳥』(2018年/米)A
36『FBI:特別捜査班 シーズン1 #1ブロンクス爆破事件』(2018年/米)B
35『THE GUILTY ギルティ』(2018年/丁)A
34『ザ・ラウデスト・ボイス−アメリカを分断した男−』(2019年/米)A
33『X-MEN:アポカリプス』(2016年/米)B※
32『X-MEN:フューチャー&パスト』(2014年/米)C※
31『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(2011年/米)B※
30『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年/米)D
29『ヴァンパイア 最期の聖戦』(1999年/米)B
28『クリスタル殺人事件』(1980年/英)B
27『帰ってきたヒトラー』(2015年/独)A※
26『ヒトラー〜最期の12日間〜』(2004年/独、伊、墺)A
25『ヒトラー暗殺、13分の誤算』(2015年/独)A
24『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(1986年/米)B
23『大脱出2』(2018年/中、米)D
22『大脱出』(2013年/米)B
21『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(2018年/米)B
20『ハンターキラー 潜航せよ』(2018年/米)C
19『グリーンブック』(2018年/米)A
18『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』(2017年/英、米)B
17『天才作家の妻 40年目の真実』(2018年/瑞、英、米)B
16『デッドラインU.S.A』(1954年/米)B
15『海にかかる霧』(2014年/韓)A※
14『スノーピアサー』(2013年/韓、米、仏)A※

13『前科者』(1939年/米)
12『化石の森』(1936年/米)B
11『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B※
10『チャンピオン』(1951年/米)B※

9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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