まだ小学生のころ、地上波テレビの洋画劇場の予告編を観て、幼心に胸をワクワクさせた作品。
実家か祖父母の家だったか判然としないのだが、小さな白黒テレビの画面に一つ目の巨人が登場し、『ユリシーズ 』というタイトルがかぶさっていたことだけはよく覚えている。
しかし、本放送を観ることは叶わず、名画座にかかったりビデオ化されたりするような名作でもなかったため、このトシまで未見のまま。
そうしたら、2017年、ユリシーズを演じたカーク・ダグラスが100歳になったことを記念してデジタルリマスター版のDVDとブルーレイが発売された。
さらにその3年後、こうしてNHKの〈BSプレミアムシネマ〉で放送されたのだから、まったくいい時代になったものである。
ちなみに、103歳のダグラスは101歳のアン夫人とともに健在で、102歳時のインタビュー映像を見た限り、トークはかなりスローになってはいるものの、認知症のようには感じられない。
というわけで、大変感慨深く鑑賞した本作、あんまり面白くなかった。
原作はホメーロスの『オデュッセイア』で、トロイ戦役でギリシア軍を勝利に導いたイタカ国王ユリシーズ(ダグラス)の活躍が描かれるのだが、マリオ・カメリーニという監督の演出がまことに平板。
序盤、ユリシーズはトロイから船で帰国している最中に行方不明になってすでに10年、王妃ペネロペ(シルヴァーナ・マンガーノ)は王族の荒くれ者たちからの求婚に悩まされていた。
そのころ、ユリシーズは海神ポセイドンの逆鱗に触れて船が難破、フェアーチ人の島に漂着した時には記憶を失っており、ナウシカア姫(ロッサナ・ポデスタ)と恋仲になってしまう。
昔テレビで見た一つ目の巨人、ポセイドンの弟ポリフェーモが登場するのは、ナウシカア姫と婚約したユリシーズが突然記憶を取り戻すくだり。
これがもう、特殊メイクも合成技術も実にショボくて、いくら1950年代とはいえ、もう少しマシな見せ方があっただろう、と言いたくなったほど。
クライマックスでは乞食に身をやつしたユリシーズが、怒りの形相も凄まじく、ペネロペとの略奪婚を試みたアンチノオ(アンソニー・クイン)を打ち負かす。
が、この見せ場も、肝心の弓矢を射る場面をカットバックの誤魔化しで済ませており、苦笑いするしかありませんでした。
一番の見どころは当時、プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティス夫人で24歳だったマンガーノ、20歳で売り出し中だったポデスタのお色気勝負か。
ポデスタはいまで言う熟女女優になったころからしか知らなかったが、まだまだ若かったこの作品での美しさは絶品!
オススメ度C。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏 D=ヒマだったら😑
※ビデオソフト無し
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A