昨年、本欄で紹介した『サスペンス映画コレクション 欲望の世界』と同じく、コスミック出版が発売した10作品1組のDVDセット。
学生時代に興味を抱きながら観られないまま、個人的幻の名作と化していた昔の映画を10本、定価1800円(つまり1本当たり180円)より若干安いネット価格で購入できたことはまことにありがたい。
Amazonから取り寄せた直後にさっそく観たのが、主演のエドワード・G・ロビンソン、監督したマーヴィン・ルロイの出世作『犯罪王リコ』。
実にいまから90年も前の1930年作品で、CSでもBSでも滅多に放送されないから、お目にかかれるのはこういう企画モノのビデオソフトしかないのだ。
ジェームズ・キャグニーやジョージ・ラフトもそうだったように、第二次世界大戦前のスターは短躯で大顔、ベルトをへその上で締めているタイプが多く、身長170㎝のロビンソンもその例に漏れない。
ロビンソンの周りも185㎝のダグラス・フェアバンクス・ジュニアを除き、似たような体格の俳優で占められているため、いま鑑賞すると、最初のうちはチンチクリンばかりのように見える。
そんなロビンソンが演じる主人公エンリコ・カエサル(シーザー)・バンデッロ、通称リコはイタリア移民のギャングで、最初のうちはみみっちい小悪事を働いて日銭を稼いでいるチンピラでしかない。
これがロビンソンのルックスとピッタリのキャラクターで、最初のうちはユーモラスにも見える。
ところが、リコはやがて暗黒街で出世しようと血眼になり、強盗の現場で大胆さや残忍さを発揮。
兄貴分をも押し除ける冷酷な本性を露わにするにつれ、ロビンソンの短躯、大顔がかえって不気味な迫力を感じさせるようになる。
それでいて、かつての相棒だったジョー・マッサラ(フェアバンクス・ジュニア)と対立すると、リコがふだん押し隠していた人情家の一面が蘇り、殺そうにも殺せず。
最後はフラハティ部長刑事(トマス・ジャクソン)の計略に引っかかり、激昂して隠れ家から飛び出してきたところを警官隊に蜂の巣にされてしまう。
この場面がいま観ても大変凄絶で、ロビンソンは大きな映画館の看板の前にうつ伏せに倒れ、悶絶しながら「これがリコの最期か!」と絶叫して絶命。
アメリカの犯罪映画における悪漢の最期として、屈指の名場面と言っていい。
オススメ度B。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2020リスト
A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏 D=ヒマだったら😑
※ビデオソフト無し
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A