のちに『マルタの鷹』(1941年)、『カサブランカ』(1943年)で大ブレークするハンフリー・ボガートが悪役時代に注目を集めたサスペンス映画。
原作はロバート・E・シャーウッドの戯曲で、ボギーが演じた指名手配犯の脱獄囚デューク・マンティーは当時、彼の代名詞にまでなった。
舞台は1934年にハットフィールドで地方公演をスタートさせ、ボストンなどで約6カ月のロングランを経て、翌35年1月にはニューヨークのオフブロードウェイでの上演を実現。
主人公の詩人アラン役のレスリー・ハワード、ヒロインとなるガソリンスタンドの娘ガブリエル役のベティ・デイヴィス、そして彼らにからむ悪漢マンティー役のボギーが大好評を博した。
この映画化権を買ったワーナー・ブラザースは、配役は舞台と同じオリジナルでいくと決定しながら、マンティー役だけはエドワード・G・ロビンソンをキャスティングすると発表。
これに怒ったボギーがハワードに電報を打ち、ハワードが「ボガートが出ないのなら降りる」と抗議して、マンティー役がボギーに戻ってきたという。
ハワードの男気に感謝したボギーは生涯この恩を忘れず、のちにローレン・バコールとの間に生まれた長男にレスリーと名付けた。
という経緯を昔から知っていて本作を観たからかもしれないが、本作のハワードとボギーは舞台で練り上げられた名コンビならではの共演を見せている。
舞台はアリゾナの大砂漠地帯にポツンと建つガソリンスタンド兼軽食堂。
ここに一人旅を続けている詩人アラン(ハワード)がひとりでふらりと現れ、店で働くガブリエル(デイヴィス)が惹かれるものを感じているところへ、脱獄囚のマンティーが乱入して籠城を始める。
とくに、最初はアランに反目していたマンティーが、徐々に友情めいた感情を抱くようになる過程が面白い。
アランがガブリエルやほかの人質の待遇などについて改善を求めるたび、彼を睨みつけながらも”Sure”(いいだろう)と、ドスの効いた声で答える場面は、おかしな表現だが、観ていて何か気持ちがいい。
これでマンティーが凄絶な最期を遂げてくれれば言うことはなかったのだが、彼の末路はラジオのニュースで語られるだけ、というのが食い足りない。
元は半年もロングランを続けた舞台劇だから、こういうエンディングでもお客さんが納得したんでしょうけどね。
オススメ度B。
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A=ぜひ!🤗 B=よかったら😉 C=気になったら😏 D=ヒマだったら😑
※ビデオソフト無し
11『炎の人ゴッホ』(1956年/米)B※
10『チャンピオン』(1951年/米)B※
9『白熱』(1949年/米)A
8『犯罪王リコ』(1930年/米)B
7『ユリシーズ 』(1954年/伊)C
6『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年/泰)B
5『七つの会議』(2019年/東宝)A
4『キャプテン・マーベル』(2019年/米)B
3『奥さまは魔女』(2005年/米)C
2『フロントランナー』(2018年/米)B
1『運び屋』(2018年/米)A