『フォードvsフェラーリ』(IMAX)😊

Ford v Ferrari 153分 2019年 アメリカ=20世紀フォックス

先週金曜に公開されたばかりで、今週末は新宿、日比谷など都心の映画館は満員だったから、109シネマズ木場まで足を伸ばした。
レース場面は前評判に違わぬド迫力で、IMAXの大スクリーン、大音響でたっぷりと楽しませてもらいました。

1960年代半ば、販売台数の低迷打開のため、ル・マン24時間耐久レースに打って出ようと考えたヘンリー・フォード2世(トレイシー・レッツ)は、イタリアのフェラーリ買収に乗り出す。
が、直接交渉に応じたエンツォ・フェラーリ(レモ・ジローネ)は、合併の条件が屈辱的だとして激昂し、買収担当重役のリー・アイアコッカ(のちのクライスラー社長、ジョン・バーンサル)を罵倒して交渉は決裂。

その直後、フェラーリはフォードのライバル会社フィアットに資本提供を受けることを発表。
これに今度はフォード2世が激怒し、「ル・マンでフェラーリに勝てるレースカーを作れ!」と大号令をかける。

そこでレース担当の副社長レオ・ビーブ(ジョシュ・ルーカス)にスカウトされたのが、かつてアストン・マーティンを駆ってル・マンで勝ちながら、心臓病のために引退せざるを得ず、カー・デザイナーとなっていたキャロル・シェルビー(マット・デイモン)。
そのシェルビーに口説かれ、自分の自動車整備工場を国税局に差し押さえられていたケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)がドライバー兼メカニックとして参加する。

しかし、典型的な大企業のエグゼクティブであるビーブは、何かとわがままで怒りっぽく、いつも薄汚いツナギや作業着姿のマイルズが気に入らない。
マイルズを中産階級に反抗的なビートニクと決めつけ、「フォードのイメージに合わないんだよ!」と、ドライバーから外すようシェルビーに迫る。

シェルビーがビーブに従った結果、フォードのル・マン初戦は惨敗したのみならず、参戦した新型車GT40の3台中2台が大破し、1台も故障。
業を煮やしたシェルビーは一計を案じ、トップのフォード2世を無理やり改良中のGT40に同乗させると、自ら運転してレースさながらのスピードと危険性を実感させ、「この車にはマイルズが必要なんです!」と訴えた。

タイトルからもわかるように、本作はイタリアの名門フェラーリに果敢に勝負を挑んだフォードの姿勢を称え、アメリカン・スピリットを礼賛している側面も確かにある。
が、それ以上に、レース界で過去の人になっていたシェルビー、税金を滞納するほど困窮していたマイルズというアメリカ社会の負け組が、勝ち組のトップに君臨するフォード経営陣を相手に悪戦苦闘するドラマが観る者の胸を打つ。

クライマックスの40分間はル・マンでのフェラーリとの一騎討ちで、ビーブはこの期に及んでなお、無理難題を吹っかけてくる。
それを撥ねつけるシェルビーが、どんな手を使ってでも勝てばいいんだと言わんばかりに、少しでもフェラーリの足を引っ張ろうとズルい手を使っているところがかえって人間臭さを感じさせました。

監督は『コップランド』(1997年)で日本公開作デビューし、『ウルヴァリン:SAMURAI』(2013年)、『LOGAN ローガン』(2017年)を撮っているジェームズ・マンゴールド。
本作は彼のベストと言っていい出来栄えだが、シェルビーとマイルズの取っ組み合い、マイルズと妻モリー(カトリーナ・バルフ)の夫婦喧嘩など、演出がストレート過ぎて観るほうが照れ臭くなってしまうようなところも、相変わらず少なくなかった。

採点は85点です。

TOHOシネマズ新宿・日比谷・渋谷・六本木、新宿ピカデリー、109シネマズ木場などで公開中

2020劇場公開映画鑑賞リスト
※50点=落胆😞 60点=退屈🥱 70点=納得☺️ 80点=満足😊 90点=興奮🤩(お勧めポイント+5点)

1『フォードvsフェラーリ』(2019年/米)85点

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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