『最期のキス』古尾谷登志江😢😳

講談社 262ページ 第1刷:2004年3月24日 定価1400円=税別/古書

前項『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』(2019年/文藝春秋)を読んだあと、Amazonで取り寄せた一冊。
2003年、45歳という若さで自ら命を絶った俳優・古尾谷雅人について、登志江夫人が思い出を綴った手記である。

実はこの本、出版された当時、読もうか読むまいかと迷ったあげく、中身のサワリを伝え聞き、結局手が出ず。
それが、前出の奥山本で『丑三つの村』の古尾谷の熱演を思い出し、15年ぶりに読んでみないではいられなくなった。

で、年末に一気に読んだ感想は、読んだほうがよかったのか、やはり読まないほうがよかったのか、かなり複雑な気分。
かつては青春映画の代表的な存在だったスター俳優が、加齢、偏屈、暴力癖などによって仕事が減り、アル中、うつ病、家庭内暴力へと傾斜して、バブル期に購入したマンションのローン返済もままならなくなる。

その姿があまりにも痛々しいぶん、終盤で紹介される古尾谷の実母の手紙は非常に感動的。
どれほどアウトロー的な個性を売り物にした俳優だろうと、幼少期に親に愛情を注がれることがいかに大切かと、このトシになってしみじみと感じ入った。

著者の登志江夫人も元日活ロマンポルノのスター女優・鹿沼えり(現在は絵里と改名)。
この人もまたぼくたちの世代にとっては大変印象深い女優で、独特の色気と陰りのある雰囲気を覚えているファンも少なくないはず。

根津仁香夫人による評伝『根津甚八』(2010年/講談社)の構成を務めた経験から言わせてもらえば、せっかくこういう人が著者を務めているのだから、俳優・古尾谷雅人の側面をもっと掘り下げてもよかったように思う。
発刊後15年たっているので、いまさらそんな注文をつけてもイチャモンにしかならないのだが。

改めて故人のご冥福をお祈りします。
また、それとともに、残されたご家族に幸多かれと祈らずにはいられません。

😢😳

2020読書目録
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※は再読、及び旧サイトからのレビュー再録

1『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』奥山和由、春日太一(2019年/文藝春秋)😁😳🤔

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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