WEDGE Infinity『赤坂英一の野球丸』167

「こうなったら、白鵬の張り手、かち上げを規則で禁じ手にするしかないんじゃないか」
好角家のタレントや文化人の間からはとうとうそんな声も上がり始めた。

今年最後の本場所、九州場所で43回目の優勝を果たした大横綱・白鵬の立ち合いについて、「あまりにも乱暴」「また悪い癖が出た」「しかも以前よりひどい」と非難が集中しているのだ。
そんな白鵬の張り手、かち上げについて、「年齢による力の衰えをカバーし、なりふり構わず勝ちにいくための手段」と指摘する声をよく聞く。

確かに、そんな苦し紛れの一面があることは否定できない。
が、もっと若かったころの白鵬を取材した私は、あの取り口の背景には別の要因があると考えている。

それは、一口に言えば白鵬独自の相撲観だ。
横審、親方衆、日本の大勢のファンには「見苦しい」「美しくない」と映る張り手、かち上げも、白鵬にとっては勝つためには当然の手段なのである。

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スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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