前項『犬神家の一族』(1976年)に続き、石坂浩二主演、市川崑監督で、横溝正史の金田一耕助シリーズの原作小説を映画化した2本目の作品。
原作が角川文庫だったため、劇場公開当時からいまのいままで、てっきり本作も『犬神家』と同じ角川映画の1本だと思っていた。
ところが、角川映画を製作していた角川春樹事務所は企画としてクレジットされているだけで、製作にはノータッチ。
本作は1977年当時の金額で7億5500万円の配給収入を稼ぎ出し、配収ランキング10位に入っているから、角川春樹としてはさぞかし歯噛みする思いだったのではないか。
昭和27年の冬、金田一(石坂)は旧友の警部・磯川常次郎(若山富三郎)に呼ばれ、山間の鬼首村(おにこべむら)の温泉宿・亀の湯に逗留していた。
昭和6年にこの村で発生し、すでに時効を過ぎている殺人事件、青池源治郎殺しの真相を探り出してほしい、というのが磯川の依頼である。
事件の犯行現場は青地が訪ねて行った庄屋の末裔・多々良放庵(中村伸郎)の家の囲炉裏端。
青池はここに居候していた詐欺師・恩田幾三に薪で後頭部を割られ、顔を囲炉裏に突っ込み、顔を焼かれて人相の判別がつかなくなっていた。
金田一が宿泊中の亀の湯の女将リカ(岸恵子)は、殺された青池の未亡人。
彼女には長男・歌名雄(かなお=北公次)、長女・里子(永島暎子)というふたりの子供がいる。
歌名雄は村の名家・由良家の泰子(高橋洋子)と交際していて、結婚の約束まで交わしていた。
が、その由良家と村の勢力を二分する仁礼家の当主・嘉平(辰巳柳太郎)は、自分の娘・文子(永野裕紀子)を歌名雄と結婚させようと考えており、リカに受諾を迫っている。
そこへ、かつて恩田が結婚していた別所春江(渡辺美佐子)が、恩田との間にできた娘・千恵(仁科明子)を連れて里帰りしてきた。
泰子、文子、里子、千恵はいずれも同じ村の小学校に通っていた同級生である。
千恵の父・恩田が犯人と目される殺人事件を金田一が調べているうち、4人の娘たちがひとり、またひとりと殺されてゆく。
その死体にはいずれも村に伝わる手毬唄になぞらえたらしい、奇妙で薄気味悪い〝装飾〟が施されていた。
と、このように、原作が同じ横溝ミステリとあってか、前年に公開された『犬神家』と設定、プロット、布石の打ち方がそっくり。
舞台は『犬神』が田舎町で本作が寒村、犠牲者は『犬神』が兄弟で本作が姉妹、顔を焼かれた人物が謎解きのカギになるところなど、そっくりそのまんま。
青池の死体が顔を焼かれ、原形をとどめていなかったことが説明されるあたりで、これがどんでん返しの布石になるのだろう、と察しもついてしまう。
となれば、娘たちを殺した犯人も『犬神』と同じパターンか、と思ったら案の定なのだから芸がない。
ただし、こういう昔の探偵映画は、どうせこういう筋書きなんだろう、犯人はアイツしか考えられない、という観客の見定めを裏切らず、ある程度予想通りに展開して満足感を与えるところにひとつの醍醐味があった。
探偵がスターだったら、犯人もスターにして釣り合いを取り、両者の間にそこはかとない愛情や友情が生まれる、というのもこの時代の定石通り。
とはいえ、犯人が自白したあと、警察が手錠もかけなければ見張りもつけていなかったのは、ひいき目に見てもやはりおかしい。
原作がどうなっているのかは知らず、犯人を演じた俳優がこういう最期を望んだのかな、という気もするが。
オススメ度C。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(*^o^*) B=よかったら( ´▽`) C=気になったら(・・?) D=ヒマだ ったら(。-_-。)
※ビデオソフト無し
106『犬神家の一族』(1976年/東宝)B
105『止められるか、俺たちを』(2018年/若松プロ、スコーレ)C
104『モリーズ・ゲーム』(2017年/米)A
103『ガタカ』(1997年/米)A
102『デューン 砂の惑星』(1984年/米)C
101『ファイヤーフォックス』(1982年/米)C
100『デス・ウィッシュ』(2018年/米)C
99『人魚の眠る家』(2018年/松竹)A
98『焼肉ドラゴン』(2018年/ファントム・フィルム)B
97『アニメ 大好きだったあなたへ ヒバクシャからの手紙』(2019年/NHK広島放送局)A※
96『ひろしま』(1953年/北星映画)B※
95『硫黄島からの手紙』(2006年/米)A
94『父親たちの星条旗』(2006年/米)A
93『さすらいの一匹狼』(1966年/伊、西)C
92『リンゴ・キッド』(1966年/伊)C
91『皆殺し無頼』(1966年/伊)C
90『バリー・シール アメリカをはめた男』(2017年/米)A
89『スマホを落としただけなのに』(2018年/東宝)C
88『アントマン&ワスプ』(2018年/米)A
87『アイアンマン』(2008年/米)A
86『ミクロの決死圏』(1966年/米)C
85『クレオパトラ』(1963年/米)C
84『瞳の中の訪問者』(1977年/東宝)D
83『HOUSE ハウス』(1977年/東宝)C
82『マザー!』(2017年/米)B
81『アリー・イン・ザ・ターミナル』(2018年/米、英、愛、洪、香)D
80『ヴェノム』(2018年/米)B
79『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年/米)B
78『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年/米)A
77『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年/米)C
76『M:i:Ⅲ』(2006年/米)B
75『M:i-2』(2000年/米)C
74『ミッション:インポッシブル』(1996年/米)C
73『ダンテズ・ピーク』(1996年/米)C
72『スーパーマン4 最強の敵』(1987年/米)D
71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C