南アフリカは選手もファンもパワフルだった

エコパスタジアムは2002年、サッカーW杯でも使用された。愛野駅から徒歩15分。

ラグビーW杯初観戦となったプールC・フランス−アルゼンチン戦(9月21日、東京スタジアム)では、ラグビーは何が起こるかわからないスポーツだと教えられた。
まあ、スポーツは何でもそうなんですけどね。

で、きのう(4日)のプールB・南アフリカ−イタリア戦(静岡・エコパスタジアム)では、ラグビーはフィジカルと勢いが物を言うスポーツだということがよくわかった。
ラグビーは、ではなく、南アフリカのスタイルは、と言うべきかな。

試合会場のエコパスタジアムがあるのは静岡県袋井市の小笠山総合運動公園。
東京から掛川まで新幹線こだま、東海道本線を乗り継いで約2時間の道程です。

午後1時半ごろのひかりの指定席に乗ろうとしたら予約で満席で、仕方なく午前11時26分発のこだまにしたところ、これもラグビージャージやW杯のポロシャツ、Tシャツを着たお客さんでいっぱい。
掛川で時間を潰そうと、お城を見たり、蕎麦を食べたりしていたら、ここにもラグビー観戦に来た外国人があちこちを歩いていた。

在来線で一駅の愛野駅まで来ると、地元の出店が並び、市民楽団がステージ演奏をやっている「おもてなしゾーン」へ。
1杯800円のハイネケン生ビールを飲みながらステージを見ていたら、南アフリカのファンが国旗を掲げて乱入してダンスを始め、待機していた女子高生の合唱団まで巻き込んで大騒ぎ。

座席はカテゴリーB1階、北東寄りの端っこ、前から16列目

前回はカテゴリーA、2階のほぼ中央で観戦したけど、今回はカテゴリーB、1階北東寄りの端っこ、前から16列目で観戦。
前回のように全体の布陣を把握しづらい代わり、ラグビー独特の肉弾戦が間近に見られる。

お値段は前回が30,000円、今回が15,000円。
ただ、今回は往復の交通費もチケット代と同じくらいかかっています。

ここまでイタリアはナミビア、カナダに2勝して勝ち点10で、南アフリカはニュージランドに負け、ナミビアに勝って1勝1敗の勝ち点6。
どちらもこの試合に勝てば決勝トーナメント進出、ベスト8入りが見えてくるが、負ければプール戦敗退となりかねない、という正念場の一戦。

世界ランキングは南アフリカが5位、イタリアが12位と大きな格差があるものの、意外にいい勝負になるんじゃないか、と期待していたのはぼくだけじゃなかったはず。
しかし、結果は南アフリカが今大会最多の49得点を挙げ、イタリアはノートライでペナルティーゴール1個だけにとどまり、49−3と今大会一番のワンサイドゲームになってしまった。

イタリアは明らかにチームのコンディションが落ちていたと思う。
試合開始1分でPR(プロップ)シモーネ・フェラーリが右太腿のケガで交代し、代わって出場した若手のマルコ・リッチョーニも右脇腹を痛めて退場。

一方、強豪国の名にかけても負けられない南アフリカは、フィジカルの強さを前面に出して攻め立てる。
前半5分、南アフリカWTB(ウイング)チェスリン・コルビが先制トライを決め、SO(スタンドオフ)ハンドレ・ポラードのコンバージョンゴールも成功。

前半12分、南アフリカ・ポラード2本目のコンバージョンゴール。これで17−3。
前半終了直前のラインアウト。間近で見るとなかなか興味深いプレーです。

イタリアも前半12分SOトンマーゾ・アランのペナルティーゴールで追いすがるが、終わってみればイタリアの得点はこれだけ。
とくに後半2分、南アフリカゴールの5メートル手前で、イタリアPRアンドレア・ロボッティ、ニコラ・クアーリオがやらかした反則が痛かった。

南アフリカNO8(ナンバーエイト)ドウェイン・フェルミューレンをプロレスのショルダースルーかボディスラムみたいに担ぎ上げてぶっ倒してるんだもん。
電光掲示板にこのリプレー映像が流れたときは、南アフリカ人たちが「レッドカード! レッドカード!」の大合唱。

結局、この反則でロボッティが退場し、流れは完全に南アフリカへ。
南アフリカもなかなかパスがつながらず、イタリアもトライ寸前(までいかないか)の見せ場をつくり、スタンドから「イッタリア! イッタリア!」という大声援も巻き起こったんですが。

ぼくの周囲では南アフリカのファンが大騒ぎ。
ビールや酎ハイを延々とガブ飲みし続け、試合中に肩を組んでアンセムを歌い、スタンドでラグビーボールのパス回しまでやっていました。

後半、何度も立ち上がっては国旗を掲げていた南アフリカのお客さんたち

帰りの電車に乗るため、南アフリカが30点以上にリードを広げ、終了まで10分を切った時点でスタジアムを出る。
周りのお客さんたちと駆け足で愛野駅まで来たら、すでに周囲は長蛇の列。

在来線の臨時便、掛川までのこだまと、すべてギリギリのタイミングで、ずっとぎゅうぎゅう詰め。
南アフリカ人たちはその間中も缶ビールを爆買いし、掛川駅のホームではのぞみやひかりが猛スピードで通過するたび、拳を突き上げて「新幹線!新幹線!」と絶叫を繰り返す。

すし詰め状態のこだまに乗ってからも、トイレの前でワイワイ話しながらまだ缶ビールや缶チューハイ(しかもロング缶)を飲んでいる。
フィジカル第一主義みたいなラグビーのスタイルも、こういう国民性ゆえなんでしょうか。

ぼくは静岡からひかりの指定席に乗り換えて、やっと一息つきました。
楽しかったけど、さすが‬に疲れたなあ。

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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