傑作『月はどっちに出ている』(1993年)の脚本を書いた劇作家・鄭義信が自分の舞台劇を監督として映画化した作品。
オリジナル版は日本の新国立劇場10周年、韓国ソウルの芸術の殿堂20周年を記念して2008、11年に上演され、日韓双方で高い評価を得ていた。
1969年から71年にかけて、大阪府豊中市の国有地に在日コリアンが〝不法占拠〟していた貧民街のようなコミュニティーのお話。
70年の大阪万博を間に挟み、立ち退きを迫る日本人の役人に反発しながら、焼肉屋を営む金一家が離散するまでの物語が描かれる。
一家の長・金龍吉(キム・サンホ)は戦時中に日本で徴兵され、戦場で左腕を失い、豊中のバラック街に自分の名を冠した〈焼肉ドラゴン〉を開店した。
前妻との間に長女・静花(真木よう子)、次女・梨花(井上真央)がいて、2番目の妻・高英順(イ・ジョンウン)の連れ子の三女・美花(桜庭ななみ)、英順との間にできた長男・時生(大江晋平)を養っている。
開巻、店で金一家が梨花と同胞の李哲雄(大泉洋)の結婚祝いの準備をしていると、帰ってきた梨花と哲雄が大ゲンカ。
豊中市役所にふたりで婚姻届の提出に行ったところ、対応に出た役人の生意気な(差別的な)態度に哲雄がブチ切れ、梨花の目の前で婚姻届を破り捨ててしまったのだ。
実は、哲雄は高校時代、梨花の姉・静花と付き合っていて、夜に大阪国際空港に忍び込んだとき、彼女が怪我をして跛(びっこ)になったという過去があった。
梨花はそうした過去があることを承知で哲雄と結婚を決意し、静花も店で知り合った尹大樹(ハン ・ドンギュ)と結婚を決意するのだが。
桜庭も含めて、三姉妹を演じる女優陣はみんな好演。
キム・サンホ、イ・ジョンウンの在日韓国人夫妻も実にいい味を出している。
一方、男優陣はいまひとつ。
とくに主役であるべき大泉洋はやはり北海道出身の俳優というイメージが強く、どう贔屓目に見ても日本戦後社会の在日韓国人には見えない。
率直に指摘させてもらえば、本作の大泉は『月はどっちに出ている』のタクシードライバー姜忠男役・岸谷五朗に比ると、味にも雰囲気にもかなりの差があるように感じた。
語り部兼狂言回しの時生の最期もあまりにあっけなく、もう一工夫してほしかったところ。
…と、あれこれ難癖をつけながら、広島の原爆スラムをこういう風に映画化してくれる人はいないかなあ、と思ったりもしました。
撮影・山崎裕、美術・磯見俊裕による絵作りがとてもよくできていたので。
オススメ度B。
ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し
97『アニメ 大好きだったあなたへ ヒバクシャからの手紙』(2019年/NHK広島放送局)A※
96『ひろしま』(1953年/北星映画)B※
95『硫黄島からの手紙』(2006年/米)A
94『父親たちの星条旗』(2006年/米)A
93『さすらいの一匹狼』(1966年/伊、西)C
92『リンゴ・キッド』(1966年/伊)C
91『皆殺し無頼』(1966年/伊)C
90『バリー・シール アメリカをはめた男』(2017年/米)A
89『スマホを落としただけなのに』(2018年/東宝)C
88『アントマン&ワスプ』(2018年/米)A
87『アイアンマン』(2008年/米)A
86『ミクロの決死圏』(1966年/米)C
85『クレオパトラ』(1963年/米)C
84『瞳の中の訪問者』(1977年/東宝)D
83『HOUSE ハウス』(1977年/東宝)C
82『マザー!』(2017年/米)B
81『アリー・イン・ザ・ターミナル』(2018年/米、英、愛、洪、香)D
80『ヴェノム』(2018年/米)B
79『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年/米)B
78『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年/米)A
77『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年/米)C
76『M:i:Ⅲ』(2006年/米)B
75『M:i-2』(2000年/米)C
74『ミッション:インポッシブル』(1996年/米)C
73『ダンテズ・ピーク』(1996年/米)C
72『スーパーマン4 最強の敵』(1987年/米)D
71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※
1『大殺陣』(1964年/東映京都)C