『リンゴ・キッド』(NHK-BS)

Johnny Oro/86分 1966年 イタリア

前項『皆殺し無頼』(1966年)と同じく、NHK-BS〈プレミアムシネマ〉の〝埋もれたマカロニウエスタン〟シリーズの1本である。
いや、番組表に銘打たれているわけではなくて、私が勝手に名付けただけのシリーズなんですが。

主演も『皆殺し』と同じマーク・ダモンで、監督は『続・荒野の用心棒』(1966年)でカルト的名匠の評価が定着しているセルジオ・コルブッチ。
この3本の日本劇場公開は、『続・用心棒』が1966年9月23日で一番早く、本作『リンゴ・キッド』が1カ月後の同年10月25日、『皆殺し』はそれから1年後の1967年10月27日に封切られている。

コルブッチが本作『リンゴ』と『続・用心棒』のどちらを先に撮ったのか、公開から半世紀以上もたったいまとなっては確かめようがない。
なぜそんなことが気になるのかと言えば、この2本、どちらもコルブッチが演出しているのに、作風がまるで異なっているからだ。

『続・用心棒』では耳を切り取って口に突っ込んだり、手をライフルの台尻と馬の蹄で潰したりと、まさに〝ザ・マカロニウエスタン〟とも言うべき、いま見ても大変どぎつい残酷描写が売り物だった。
ところが、本作『リンゴ』は愛すべき無法者、絵に描いたような正義感の保安官の友情を軸とした本場アメリカの西部劇さながらの筋立てになっており、血しぶきが飛ぶ場面がほとんどない。

ダモン演じる主人公の賞金稼ぎジョニー・オロは「黄金のジョニー」という意味で、お尋ね者の悪漢を殺しては賞金を紙幣ではなく金貨で受け取っている。
しかも、愛用の拳銃もブーツの拍車もみんな金製という漫画みたいなキャラクター。

このジョニーが悪漢ペレス兄弟を撃ち殺し、アメリカとメキシコの国境の町ゴールドストーンにやってくる。
すると、杓子定規な保安官ノートン(エットレ・マンニ)が「この町は武器の携帯は禁止。違反したら留置5日間だ」と言い渡し、ジョニーを逮捕。

そこへ、ジョニーに兄を殺されたペレス兄弟の末弟ユアニト(フランコ・デ・ローザ)がアパッチ族を引き連れて来襲し、「ジョニーを引き渡せ、さもないと町の人間たちを皆殺しにするぞ」と恫喝。
町民たちが逃げ出してゴーストタウンとなった町を舞台に、ジョニー&ノートン・コンビとユアニト&アパッチ一味の銃撃戦が展開されることになる。

あくまでも法を守る主義を崩さないノートンが、ペレスたちに攻め立てられてもなかなかジョニーを留置場から出そうとせず、最後の最後で手を結ぶという展開は古式ゆかしい西部劇のお約束通り。
ただし、ユアニトに丸腰にされたジョニーが反撃に出るクライマックスでは、金製のシガレット・ホルダーを使ったコルブッチらしいアイデアが光っている。

オススメ度C。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

91『皆殺し無頼』(1966年/伊)C
90『バリー・シール アメリカをはめた男』(2017年/米)A
89『スマホを落としただけなのに』(2018年/東宝)C
88『アントマン&ワスプ』(2018年/米)A
87『アイアンマン』(2008年/米)A
86『ミクロの決死圏』(1966年/米)C
85『クレオパトラ』(1963年/米)C
84『瞳の中の訪問者』(1977年/東宝)D
83『HOUSE ハウス』(1977年/東宝)C
82『マザー!』(2017年/米)B
81『アリー・イン・ザ・ターミナル』(2018年/米、英、愛、洪、香)D
80『ヴェノム』(2018年/米)B
79『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(2018年/米)B
78『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』(2015年/米)A
77『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』(2011年/米)C
76『M:i:Ⅲ』(2006年/米)B
75『M:i-2』(2000年/米)C
74『ミッション:インポッシブル』(1996年/米)C
73『ダンテズ・ピーク』(1996年/米)C
72『スーパーマン4 最強の敵』(1987年/米)D
71『スーパーマンⅢ 電子の要塞』(1983年/米)C
70『スーパーマンⅡ リチャード・ドナーCUT版』(2006年/米)B
69『スーパーマンⅡ 冒険篇』(1980年/米)A
68『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(1978年/米)A
68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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