『スーパーマン ディレクターズ・カット版』(WOWOW)

Superman
152分 1978年 アメリカ=ワーナー・ブラザース 日本公開1979年

WOWOWで〈スーパーマン・スペシャル〉という特集が組まれた今年5月、初っ端に放送されたスーパーマン映画の古典。
スーパーマンは本作以前にも実写版映画化、テレビドラマ化作品が作られ、現在もDCコミックスの実写版シリーズでヘンリー・カヴィルが演じている。

しかし、その中で一番の決定版はやはり、何と言ってもこのクリストファー・リーヴ主演版だろう。
リーヴの雰囲気とキャラクターはまさにスーパーマンを演じるために生まれたかのようだ、という私の印象は、広島の映画館(スカラ座=現在は閉館)で観た初公開当時も、WOWOWで再見したいまもまったく変わらない。

そんなリーヴの存在感に加えて、スーパーマンを単なる子供漫画のヒーローとして捉えず、大人の観客にも夢を見せられる普遍的な存在に昇華させたプロデューサーのイリヤ・サルキンドとピエール・スペングラー、監督リチャード・ドナーのセンスと才覚が素晴らしい。
これは前年の1977年、『スター・ウォーズ』第1作が公開され、全世代の支持を受けて世界的ヒットを記録したことも影響しているのだろう。

例えば、空へ飛び上がる演出ひとつ取っても、現在のカヴィルが弾丸のようにビューンと物凄いスピードですっ飛んでいくのに比べ、リーヴはフワリと舞い上がっていく。
これはリーヴの個性を生かし、スーパーマンをアクションヒーローではなく天使のように描きたかった、と考えたドナーのアイデアによるもの。

ただし、リーヴは自伝の中で、スーパーマンにはその時代にふさわしい解釈や演じ方があり、私のイメージは70年代後半から80年代前半にかけての一時的なものに過ぎない、という趣旨の考えを語っている。
この謙虚な姿勢がより一層、リーヴのスーパーマンを魅力的な存在にしたのかもしれない。

ちなみに、リーヴ自身はクラーク・ケントのキャラクターに近い人間で、ロイス・レイン(マーゴット・キダー)とのラブシーンでは、ケイリー・グラントを意識して演じたという。
本作にどことなくクラシカルな雰囲気が漂っているのもそのためか。

ジョン・ウィリアムズの勇壮なテーマ曲が流れるオープニングは、いま観ても武者震いがするほどゾクゾクさせられる。
この出来栄えだけは『スター・ウォーズ』を超えている、と思います。

オススメ度A。

ブルーレイ&DVDレンタルお勧め度2019リスト
A=ぜひ!(^o^) B=よかったら(^^; C=ヒマなら(-_-) D=やめとけ(>_<)
※ビデオソフト無し

68『MEG ザ・モンスター』(2018年/米)C
67『search/サーチ』(2018年/米)A
66『検察側の罪人』(2017年/東宝)D
65『モリのいる場所』(2018年/日活)B
64『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(2017年/米)B
63『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017年/韓)A
62『ゲティ家の身代金』(2017年/米)B
61『ブルーサンダー 』(1983年/米)A
60『大脱獄』(1970年/米)C
59『七人の特命隊』(1968年/伊)B
58『ポランスキーの欲望の館』(1972年/伊、仏、西独)B
57『ロマン・ポランスキー 初めての告白』(2012年/英、伊、独)B
56『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年/米)A
55『ウインド・リバー』(2017年/米)A
54『アメリカの友人』(1977年/西独、仏)A
53『ナッシュビル』(1976年/米)A
52『ゴッホ 最後の手紙』(2017年/波、英、米)A
51『ボビー・フィッシャーを探して』(1993年/米)B
50『愛の嵐』(1975年/伊)B
49『テナント 恐怖を借りた男』(1976年/仏)B
48『友罪』(2018年/ギャガ)D
47『空飛ぶタイヤ』(2018年/松竹)B
46『十一人の侍』(1967年/東映)A
45『十七人の忍者 大血戦』(1966年/東映)C※
44『十七人の忍者』(1963年/東映)C
43『ラプラスの魔女』(2016年/東宝)C
42『真夏の方程式』(2013年/東宝)A
41『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』(2018年/米)B
40『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年/米)B
39『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』(2018年/米)C
38『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』(2017年/米)D
37『デッドプール2』(2018年/米)C
36『スキャナーズ3』(1991年/加)C
35『スキャナーズ2』(1991年/米、加、日)C
34『スキャナーズ』(1981年/加)B
33『エマニエル夫人』(1974年/仏)C
32『死刑台のエレベーター』(1958年/仏)B
31『マッケンナの黄金』(1969年/米)C
30『勇気ある追跡』(1969年/米)C
29『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年/米)A
28『ドクトル・ジバゴ 』(1965年/米、伊)A
27『デトロイト』(2017年/米)B
26『クラッシュ』(2004年/米)A
25『ラ・ラ・ランド』(2016年/米)A
24『オーシャンズ13』(2007年/米)B
23『オーシャンズ12』(2004年/米)C
22『オーシャンズ11』(2001年/米)B
21『オーシャンと十一人の仲間』(1960年/米)B
20『マッキントッシュの男』(1973年/米)A
19『オーメン』(1976年/英、米)B
18『スプリット』(2017年/米)B
17『アンブレイカブル 』(2000年/米)C
16『アフター・アース』(2013年/米)C
15『ハプニング』(2008年/米)B
14『麒麟の翼〜劇場版・新参者』(2012年/東宝)C
13『暁の用心棒』(1967年/伊)C
12『ホテル』(1977年/伊、西独)C※
11『ブラックブック』(2006年/蘭)A
10『スペース・ロック』(2018年/塞爾維亜、米)C
9『ブラックパンサー』(2018年/米)A
8『ジャスティス・リーグ』(2017年/米)C
7『ザ・リング2[完全版]』(2005年/米)C
6『祈りの幕が下りる時』(2018年/東宝)A
5『ちはやふる 結び』(2018年/東宝)B
4『真田幸村の謀略』(1979年/東映)C
3『柳生一族の陰謀』(1978年/東映)A
2『集団奉行所破り』(1964年/東映)B※

1『大殺陣』(1964年/東映京都)C

スポーツライター。 1986年、日刊現代に入社。88年から運動部記者を務める。2002年に単行本デビュー作『バントの神様 川相昌弘と巨人軍の物語』(講談社)を上梓。06年に独立。『失われた甲子園』(講談社)新潮ドキュメント賞ノミネート。東スポ毎週火曜『赤ペン!!』連載中。 東京運動記者クラブ会員。日本文藝家協会会員。
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